第10話:文化祭本番!予想外のトラブル発生
文化祭当日、朝から校内は活気に満ちていた。模擬店や展示が並ぶ中、颯太たちのネイルブースも準備を整え、来場者を迎える。
「お、結構人来てるやん!」
瑞希が受付から周囲を見渡し、目を輝かせながら言った。
興奮した様子で軽く手を叩きながら、「これは予想以上に盛り上がるかもな!」と笑う。
ネイル体験が珍しいのか、興味を示す生徒や先生が次々とブースを訪れる。
最初は順調だった。しかし、思った以上の来場者に、颯太の施術が追いつかなくなってきた。
「次、どのデザインがええですか?」
「このシンプルなやつでお願いします!」
「了解です!」
手際よくネイルチップを貼り、甘皮処理をしながらも、待っている人の列がじわじわと伸びていく。
「時間が足りへん……!」
焦りが募る颯太に、瑞希が声をかけた。
「施術と接客、分けよ!私がデザインの相談と受付やるから、颯太は施術に集中して!」
「助かる……!頼む!」
瑞希が列の整理と受付を引き受けたことで、少しずつ流れがスムーズになった。しかし、ここで予想外の来訪者が現れる。
「颯太くん、また来たで~!」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには近所の商店街のおばちゃんが立っていた。
「こないだのイベント以来、ネイルが気に入ってなぁ。今日は文化祭やし、派手~なやつお願いするわ!」
「派手~なやつって……?」
「せやなぁ、金色にキラキラつけて、虎の柄とか入れてくれる?」
「えっ!?文化祭やのに、そんなガチなデザインっすか!?」
虎柄にキラキラのデザインなんて、文化祭の簡単なネイルブースでは到底想定していなかった。
(マジか……。こんな本格的なアート、今すぐできるんか……?)
軽く手のひらに汗が滲むのを感じながら、おばちゃんの満面の笑みに圧倒される。
「できるやろ?」
おばちゃんのプレッシャーに、颯太は苦笑しながら「こ、今回はシンプルなデザイン中心なんで……!」と何とか説得を試みた。
何とか説得し、落ち着いたデザインにしてもらうことで納得してもらえたが、予想外の注文に颯太は冷や汗をかいた。
その後も次々とお客さんが訪れる中、菜奈が自分の展示の合間を縫って応援に来てくれた。
「お疲れさまです!ちょっとだけ手伝えます!」
「助かる……!」
さらに、菜奈の大阪の友達がブースを訪れ、ネイルチップを購入していった。
「おぉ、意外と人気やな!」
大忙しのまま、文化祭の時間はあっという間に過ぎていった。
そして、イベントが終わり、後片付けをしながら颯太は息をついた。
「……もっと上手くならなあかんな」
瑞希と菜奈が顔を見合わせ、笑う。
「せやな。でも、今日はめっちゃええ経験になったんちゃう?」
後片付けを終えた颯太は、自分の指先をじっと見つめた。文化祭の忙しさの中で、うまくできた施術もあれば、まだまだ課題が残るものもあった。
(もっと、…)
ふっと息を吐き、改めて決意を固める。
「次は、もっとレベルアップせなな……!」
瑞希と菜奈がそんな颯太を見て笑い、「その意気や!」と肩を叩いた。
次回、第11話『2級試験に向けた最終調整と接客練習』
文化祭を終え、一息つく間もなく次の挑戦が待っていた。
「2級試験まで、もう時間ないで?」