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【ノベル1巻発売】悪虐継母に転生しましたが、未来のヤンデレが天使すぎて幸せです【コミカライズ企画進行中】  作者: 三沢ケイ


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「ポーくんがいないの」


 ルイスは涙ながらに訴える。

 ポーくんとはイザベルがルイスのために作ったテディベアだ。薄茶色で、二十センチくらいの大きさだったと記憶している。


「いつからないんだ?」

「わかんない。おひるごはんたべるときはあった」

「昼食以降、出かけたのか?」

「ううん」


 ルイスは首を左右に振ると、「ポーくん……」とぬいぐるみの名前を呼びながらまたさめざめと泣きだした。

 アレックスはイザベルのほうを見る。


「昼食後に行った部屋は確認したのか?」

「はい。ルイスに聞いて今日行った部屋──子供部屋とリビング、ダイニング、書斎は確認したのですが、見当たらなくて」

「そうか」


 随分と長いこと探しているのだろう。イザベルはすっかり困り果てた顔をしていた。


「ルイス。お母様が別に作っている白くまさんのぬいぐるみがもうすぐできるから」

「ポーくんがいいの」


 今作っているという白いテディベアで機嫌を直させようとしていたが、あえなく失敗していた。


「ルイスのテディベアか。少し待て」


 アレックスはそう言うと、眉間の辺りに意識を集中させる。そこから、周囲の魔力を探るように自分の魔力を展開させていった。


「あった。二階の書斎の辺りだな」

「え? でも、書斎は──」


 イザベルは小首を傾げる。先ほど書斎も探したと言っていたので、そこにはないと言いたいのだろう。


「行ってみよう。ルイス、おいで」

「うん」


 ルイスは目に涙を浮かべたまま、アレックスの右手をぎゅっと握る。


(また魔力が増えたな)


 ある程度有能な魔術師になると、相手に触れただけでその人がどれくらいの魔力を持っているのかを大体察することができる。先月よりも、ルイスの魔力は明らかに増えていた。

 アレックスの魔力量を抜くのも時間の問題かもしれない。


 書斎は二階の廊下の突き当りにある。アレックスが階段を上がると、書斎のドアが開け放たれたままになっているのが見えた。ポーくんを探した際に開けっ放しにしていたのだろう。


「どこにあるのかしら?」


 イザベルは床を眺めながら、部屋の中を見回す。彼女の言う通り、どこにも探しているポーくんらしきぬいぐるみはなさそうに見えた。


 アレックスは再び魔力を集中させ、周囲に展開する。斜め後ろに微かにルイスの魔力を感じ、振り返った。


「ドアか?」


 ちょうどルイスの魔力を感じた位置には、廊下と書斎を繋ぐドアがあった。

 大きく開け放たれており、アレックスの位置から廊下の先にある階段まで見える。


 アレックスはつかつかとドアに歩み寄ると、開け放たれているドアを閉める。すると、開いたドアでちょうど見えなくなっていた位置に薄茶色のテディベアが落ちていた。


「ポーくん!」


 ルイスはハッとした様子でテディベアのほうに駆けよると、それを拾い上げて大切そうに胸に抱く。


「ドアの陰にあるから気付かなかったのね。よかったわね、ルイス」

「うん。おとうさま、ありがとう!」


 ルイスはポーくんを胸に抱いたまま、アレックスにお礼を言う。


「ルイス。少し、私と探索魔法の練習をしてみようか」

「たんさくまほう、ぼくできるかな?」

「魔力を探って人や物を探すんだ。これができれば、またポーくんがいなくなってもすぐに捜せる」

「うん。ぼくやる!」


 ルイスはポーくんを片手で抱えたまま、はっきりと宣言する。


「よし。では、お父様は帰宅後の片づけがあるから三十分後に始めようか」

「うん!」


 ルイスは目を輝かせて頷いたのだった。


 

   ◇ ◇ ◇


 ルイスが魔法の天才であることはグラファンの設定で最初から知っていたけれど、実際にその才能を目にすると本当にすごくて驚いてしまう。


 アレックスに探索魔法を教わったルイスはものの数日でコツを覚えてしまい、今はかなりの正確性をもって捜し出すことができる。


「おかあさま、いい?」

「ええ、いいわよ」


 イザベルはアンドレウ侯爵家の客間に置かれた空のクローゼットに身を隠し、返事をする。

 トタトタと足音が真っ直ぐに近づいてきて、クローゼットのドアが開かれた。


「おかあさま、みっけ!」


 クローゼットの前には、得意げな顔をしたルイスが立っていた。

 アレックスから探索魔法を教わってからというもの、ルイスのお気に入りの遊びはかくれんぼなのだ。それも、かくれんぼの鬼ばかりをやりたがる。

 魔法で人を捜し出せるのがとっても嬉しいようだ。


「お母様は魔力がほとんどないから見つけるのは難しいってお父様が言っていたのに、あっという間に見つけられてしまったわ。ルイスはすごいわね」

「うん、へへっ」


 ルイスは褒められて嬉しそうに笑う。

 イザベルは壁際の時計を見た。


「さあ、そろそろお出かけの準備をしないと約束の時間に遅れてしまうわ」

「うん」

「アーくんとスーくんをレオンと殿下にあげるんでしょう?」

「うん」


 ルイスは頷く。

 アーくんとスーくんというのは、イザベルが新たに作ったテディベアにルイスが付けた名前だ。 



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― 新着の感想 ―
灰色クマができたらグレイか…
ぬいぐるみ抱っこする子供達三人もいたら幸せすぎて回りの大人倒れないかな?って心配になるほど可愛いです(*´▽`*)
なんだかヤンデレの必須技能のような魔法を修得している気が…(;゜д゜)ゴクリ…
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