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(49)

(とっても楽しそうだから、今日はまあいっか)


 今すぐここでミゲルに取って食われるわけでもないから危険もないだろう。

 イザベルはそう判断すると、今日のところは静かに見守ることにした。


 遊んでいると、時間が経つのはあっという間だ。一時間程経った頃に、従者が滑り台のてっぺんにいるミゲルに近づいた。


「殿下。そろそろお戻りになる時間です」

「まだ五分しかたっていないだろう?」

「すでに一時間経過しております」

「そんなばかな」


 ミゲルは納得いかない様子で眉根を寄せたが、従者に時計をみせられて諦めたようだ。


「しかたがない。わざわざ来てくれるせんせいたちをまたせるわけにはいかないからな」


 ミゲルは滑り台を滑り降りてから立ち上がると、ふうっと息を吐く。


(誰かに言われなくても先生のことを考えられるなんて、なんて偉い子!)


 さすがは正規ルートの攻略者なだけある。子供のころから人格者だ。ミゲルは遊具の上にいるルイスとレオンを見上げる。


「ありがとう。楽しかった」

「えっ、もうかえっちゃうの?」


 ルイスは遊具の間から頭を出して下を覗き、不満を口にする。


「ああ。せんせいがくる」


 ミゲルが頷くと、ルイスとレオンは大急ぎで滑り台から滑り降りてきた。

 

「ねえ、ミゲル。また遊べる?」


 ルイスは屈託ない笑顔を浮かべてミゲルに問いかける。その様を見てイザベルは「ひいっ」っと小さく悲鳴を上げた。


「ルイス! 殿下よ殿下。殿下って呼ぶの」


 王族を勝手に呼び捨てにするなんて、罰せられてもおかしくない。

 イザベルは焦って訂正させようとする。


「ちがうよ。デンカじゃなくてミゲルって言うんだよ」

「ちょっ!」


 ルイスは人差し指を立て、頬を膨らませてイザベルの間違いを修正する。


(殿下は名前じゃないのよ!)


 眉根を寄せて訂正させようとする姿も可愛いが溢れているのだが、今はそれどころではない。不敬罪に問われる危機なのだ。


 そのとき、「よい」と凛とした声が響いた。ミゲルだ。


「もう私たちはともだちだからな」


 ミゲルはルイスとレオンのふたりを見つめて、微笑む。

 イザベルはミゲルの大人な台詞に思わず口元に手を当てる。


(流石は王太子殿下! 神かな)


 にこっと笑うミゲルの眩しさよ。後ろに照明ライトでも設置されているのではないかと思うほどだ。

 

 一方のルイスとレオンは、友達と言われて表情を明るくする。


「うん、友達だね。へへっ」


 ルイスは二人目の同年代のお友達ができたのが嬉しいようで、少し気恥しそうな様子で頬を掻く。

 

「では、またな」

「うん。ばいばーい」

「気をつけて」


 馬車に向かって従者と歩き出したミゲルを見送りながら、ルイスとレオンは両手を大きく振る。

 その後、さらに一時間ほど遊んで解散したのだった。


   ◇ ◇ ◇


 その日の晩、ルイスはアレックスに夢中で昼間の話をしていた。


「ひもにぶらさがってね、ひゅーんってとぶの!」

「紐にぶら下がって? 随分と変わった遊びだな。ブランコに似た構造か?」


 ルイスは初めて遊んだ遊具のことを一生懸命説明しているが、アレックスは見たことがないのでなかなかイメージが伝わらないようだ。

 遂にはスケッチブックを持ち出して絵を描いて説明していた。


「あとはね、新しいお友達ができたの!」

「新しいお友達?」

「うん。ミゲルっていうんだよ」


 ルイスは新しいお友達ができたのがよっぽど嬉しかったようで、笑顔で説明する。


「ミゲル殿下がいらしたんです」


 イザベルはこそっとアレックスに耳打ちする。


「殿下が?」


 アレックスは驚いて目を丸くする。


「デンカじゃなくてミゲルだよ!」


 ルイスはすかさず訂正した。

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― 新着の感想 ―
成長すると、立派な男性になってくるのは分かっていても、 今はただ、保育園みたいに小さい子供達が遊んでいるだけ、しかも美形!! かわいい&眼福で、最高ですなっ!! そして、殿下、今から性格が出来過ぎてる…
可愛いが…可愛いが溢れている!!なんて癒しなんでしょうか。心がポカポカになります。癒しをありがとうございます!!
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