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【ノベル1巻発売】悪虐継母に転生しましたが、未来のヤンデレが天使すぎて幸せです【コミカライズ企画進行中】  作者: 三沢ケイ


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 アレックスとイザベルは、『ルイスの前では夫婦円満であるように振る舞う』という約束をしている。

 彼はその約束を守って今の返事をしたのだとはわかっているが、なんだか照れくさく感じた。




 結局、イザベル達は予定を大幅に延長して四時間近く公園に滞在した。昼前に公園に来たのに、帰る頃にはだいぶ太陽が傾いていた。


 ルイスは疲れてしまったようで、馬車に乗るとすぐにイザベルの膝の上に頭を預けて眠ってしまった。


「旦那様、お忙しいのに今日はお付き合いいただきありがとうございました」


 イザベルは馬車の向かいの席に座るアレックスにお礼を言う。


「いや。こちらこそ礼を言おう。ルイスも楽しそうだったし、私も楽しかった」

「旦那様が楽しめたのならよかったです。いいリフレッシュになればと思っていたので」


 イザベルは微笑む。


 以前よりはだいぶましになったものの、アレックスのワーカホリックは相変わらずだ。

 大きな会議前などはそのまま職場に泊ってくることも多いし、ルイスとの時間を捻出するために今まで以上に集中して仕事をしているはずだ。


 そんな中ピクニックのためにまとまって時間を取るために、彼は少なからず無理をしたはずだ。

 せっかくの休みなので、アレックスにもいい休息となったならこれ以上喜ばしいことはない。


 一方のアレックスは、なぜか少し驚いたような顔をした。


「きみは──」

「はい?」


 アレックスが何かを言おうとして口ごもる。

 よく聞き取れなかったのでイザベルが聞き返そうとしたそのとき、馬車がガタンと停まった。


「きゃっ!」


 急停車の勢いで体が前に傾く。咄嗟にルイスを庇ったイザベルは前のめりになった。


「大丈夫か?」


 すぐ頭上で声がして顔を上げると、至近距離にアレックスの顔があった。アレックスは両手でイザベルの両肩を支えている。


「わっ、申し訳ございません!」


 驚いたイザベルは慌てて体勢を立て直す。バランスを崩した際にルイスを庇ったせいで、自分は頭からアレックスに突っ込んでしまったようだ。


(びっくりした……。アレックス様って、ルイスの父親だけあってものすごい美形なのよね)


 至近距離で見るイケメンの威力よ。慣れないことにドキドキする心臓を落ち着かせるようと、イザベルは深呼吸をする。

 ルイスは衝撃で目を覚ましてしまったようで、寝ぼけまなこを擦りながら「もうついたの?」と起き上がる。


「いや、まだだから寝ていていい」

「ふーん」


 ルイスはアレックスの返事を聞き、イザベルの肩に頭を預ける。一方のアレックスは、馬車の窓から前方を覗き込んだ。


「おい、何があった?」


 アレックスが御者に向かって大きな声で呼びかける。御者は手綱を持ったまま、大きく体を捻って振り返った。


「そこの橋の上で馬車が立ち往生しているんですよ」

「脱輪か? たしかにあの位置に停まられては、すれ違うことができないな」


 アレックスは窓から前方を覗き込み、眉間にしわを寄せる。


「脱輪なら魔法ですぐに直せるから、ちょっと見てくる。ここで待っていてくれ」

「ぼくもいく!」


 アレックスが馬車から降りると、ルイスがすかさず立ち上がる。


「ルイス。お父様の邪魔になるからだめよ」

「ぼく、じゃましないよ」


 イザベルが止めようとすると、ルイスは心外だと言いたげに頬を膨らませた。仕方なく、イザベルもルイスと一緒に降りる。

 馬車の進行方向にある橋のちょうど真ん中あたりには、一台の馬車が立ち往生しているのが見えた。


 アレックスは馬車に近づいて行く。


「おとうさま、まって」


 ルイスはその後ろをトタトタと追いかけて行った。


 ふたりの後姿を見守っていたイザベルは、ふと馬車の様子がおかしいことに気付いた。

 衝突した気配があるわけでもないのに、馬車のフロント部分が壊れていたのだ。それこそ、何か鈍器で思い切り叩いたかのような壊れ方だ。


(あれって──)


 見た瞬間に違和感を覚えた。


(ただの脱輪じゃない気がするわ)


 それと同時に思い出したのは、アレックスの最期についてだ。


 ──強盗に襲われた馬車を助けようとして、魔法銃の犠牲になった。


 たったそれだけの情報だけれど、嫌な予感がする。


「旦那様!」

 イザベルはアレックスに呼びかける

「どうした?」


 アレックスは立ち止まると振り返り、イザベルを見る。その間にアレックスに追いついたルイスも、振り返った。


「戻りましょう」

「しかし、ここが通れないとかなりの遠回りになってしまう。馬車を移動させられるなら移動させたほうがいいんだ」

「でも──」


 アレックスの言うことは理解できる。けれど、嫌な予感が拭えないのだ。


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