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第73話 美少女JKモデル、ガチで帰還する①


 起き上がると、そこは白いベッドの上だった。


 パチパチと、二、三度瞬きをしてから、周囲を見回す。

 ベッド周りをぐるりと囲んだカーテンには、見覚えがある。


 保健室、または、病院だ。


 やけに静けさなので、多分、病院だと思う。

 保健室なら、誰かが泣いたり笑ったり、どっかの廊下から叫び声が聞こえたりって、もっとカオスだから。


 首を傾げると、寝違えたみたいな痛みがあった。


 なぜ病院にいるのか、思いつく理由は二個あるけど、ウチはとりあえずもう一度布団のなかに潜り込む。


 生きてただけで、ありがたい。

 もう二度と、目を開けられないと思ってたから……



   ◇



 次に目を覚ましたときには、人がいた。


 知らない大人の女だ。

 寝ぼけた頭でも、その制服からして看護師だとわかる。


 三十から四十くらいだろうか。

 看護師の女は痩せていて、ウチが目を覚ましたのに気づいて、事務的な微笑みを返した。


 その瞬間だった。


 ウチは唐突に、元の世界に戻ってきたと悟った。

 なんのヒントもない。

 自分でもどうしてそう思えたのかわからない。


 でも、今目の前で話し始めたこの小綺麗な人は、多分世間的に美人と言われてる気がしたのだ。



「あら、おはよう。強運の持ち主さん」



 彼女は口を開いたかと思ったらそう言った。



「わかる? ここは病院。アナタ、車にはねられたのよ」



 ウチは自分の直感の理由を知りたくて、彼女の顔の造りを眺める。

 その様子を聞いてる証拠と思ったのか、看護師は返事も待たずに話し続けた。



「スピード違反の車に轢かれて、数メートルくらい飛ばされたんだけどね。検査してみたらどこも異常なし。骨折ひとつしてない。みんな、アナタが武術の達人かなんかじゃないかって噂してるわよ」



 ウチは唖然とした顔を看護師に向ける。


 そんなはずはない。

 ウチはたしかに聞いたはずだ、骨がポッキーみたいにパキパキ折れてく音を。

 少なくとも武術なんかやったことないって伝えようと口を大きく開けて、初めてウチは自分の体の変化に気づいた。



 ――喉から、なんの音も出てこない。



 声を出そうとしても、まるでそのやりかたを忘れたみたいに、スカスカと息が漏れるだけで、手応えがまったくないのだ。マジのガチでビビった。


 パニクって口をパクパクさせる患者を見て、看護師も異変を感じ取ったらしい。



「大丈夫? どこかおかしい? 話せる?」



 思い切り首を振る。

 でも、声が出ないのだからなにがおかしいのか話せない。


 なにかないかと身の回りに目を走らせると、枕元の小机に自分の鞄が乗っているのを見つけた。

 引っ掴むと、スマホが見つかる。

 運よく電源のついたそれに文字を打ち込んで、看護師の前に突き出した。



『声が出ない』



 彼女は細く整えられた眉をわずかに上げると、



「あらら。先生を呼んでくるから、ちょっと待っててね」



 と言って、パタパタと靴を鳴らして出ていった。



 あらら、じゃないのよ。



 その悠長さにウチは焦れながら、手元のスマホに目を落とす。


 ふと気になって、LINEを開く。

 すると、千人超えの友達がズラッと画面に並んだ。



 間違いない。



 このスマホは、カースト最下位だった『山崎りりあ』のものじゃない。

 ウチ自身のスマホだ。



 つまりこの世界は、本当に『ウチの世界』なのだ……




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