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第71話 美少女JKモデル、ガチで渋谷でリベンジする②


 かくして、ブス三人に芸能人級の美女ひとりっつー、端から見たらイミフな団体は、渋谷の街にあるピンクを基調にした服屋の前で足を止めた。


 そう。ここは、二次審査の衣装を買いに来たとき、紗凪が唯一自分で入った店だ。



「さ、着いたよ」



 ウチは、隣の紗凪を振り向く。

 紗凪が青い顔をしてるのが、マスク越しにもわかった。



「うぅ……でも私なんかが……」


「なにを今更……そのために来たんでしょ? これしか用事ないよウチら」



 ウチの言葉に、よしひともうんうんと頷いてる。


 今日、ウチらが渋谷に来たのは、紗凪の買い物に付き合うためだった。

 立ち直ったあの日、そのまま紗凪の家で話してたら、本人が言い出したのだ。



 憧れの服が欲しい、と。



「紗凪さん、服買うってだけで三人も連れてきてんすよ」



 よしひとが追撃する。



「買わなかったら、あっしらをただ電車賃使わせて、無駄歩きさせたようなもんス」


「うぅ……それはたしかに……」


「それに、ここにいる節子さんは芸能人様っスよ。紗凪さんと違って暇じゃないんス」



 よしひとが両手を差し出して節子を持ち上げるようにすると、節子は眉をつと上げた。

 さっき暇って言ってたけどな、そいつ……



「うぅ……い、行きます……!」



 紗凪がヤケクソ感溢れる感じで叫ぶと、店へと進み始めた。

 手と足が同時に出てて、ぎこちないことこの上ない。


 ウチら三人は顔を見合わせ、その後に続いて店に入った。



   ◇



「しっかしピンクだらけっスねぇ。なんでそんなに同じ色好きなんスかね」


「金ピカ好きがなに言ってんだ?」



 入店した感想を述べるよしひとを適当にあしらいつつ、紗凪の様子を眺める。


 彼女は、ピンクの群れのなかを申し訳なさそうに歩いていて、商品を手に取ることさえ怖がっていた。


 少し手伝ってやったほうがいいだろうか……


 そう考えて近づこうとしたそのとき、どこからともなく節子が紗凪の傍に現れた。



 一言二言話してから、一緒になにかを探し始める。

 仏頂面の節子が陳列されたうちのひとつを指差すと、紗凪はそれを恐る恐る体に当ててみせる。


 節子は値踏みするような目で全体を眺めてから、首を横に振る。

 紗凪は、小さい汗を飛ばしながら服を元の場所に戻す。



 目の前に展開される光景から、ウチは目が離せなくなった。


 二人に初めて会ったときは、イジメる側とイジメられる側、見下ろす側と見上げる側だった。


 それが今は、隣り合って服を吟味してる。



 ウチがミスコンで戦った先の理想が、そこにある気がした。



 不可能では、ないんだ……

 複雑で、繊細で、重苦しい外見の問題も、超えることはできるんだ。



 二十分ほど悩んだだろうか。


 節子に背中を押され、紗凪がついに会計カウンターに進んでいく。


 手には、フリルや装飾がいっぱいあしらわれた憧れの服……


 紙袋に入れてもらうときでさえ彼女の緊張は見てとれた。

 頻繁に自分の手を握っては、商品が包まれてく様を目で追ってる。


 他人からしたら、なにを服買うごときでオドオドしてんだって思うんだろう。


 でも、紗凪にとってこの買い物は、人生でも大きな儀式だった。

 服を手にした瞬間、もう彼女は、憧れに手を伸ばせなかった自分ではなくなる……


 店員がカウンター越しに、これまたピンクな紙袋を差し出す。



 紗凪は唇を引き結んで、その手提げ紐をしっかりと掴んだ。


 まるで、いくつものハードルを勢いよく飛び越えるみたいに、力強く――




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