第69話 美少女JKモデル、ガチで泣く②
「紗凪⁉︎」
「り……りりあちゃん……」
彼女は声を出すのも久しぶりなのか、たどたどしく口にする。
彼女の姿がさらに痩せてしまってるのは、一目で分かった。
目の奥は暗く、クマができて、髪は重い。右腕の袖からは、包帯が見え隠れしてる。
痛々しい……
それでも、それは紗凪だった。
ウチはやっと安心できた。
ちゃんと……生きてる……
ウチはいつの間にか紗凪に抱きついてた。
「わ……っ」
彼女の肩に顔を埋める。温かさが伝わってくる。
「ごめん、紗凪……ごめん……」
涙が溢れて、止まらない。
離れてたのは数週間なのに、ずいぶん長い間会ってなかったような気がする。
泣きながら謝り続けていると、頭に紗凪の手がゆっくり置かれた。
「さっきね……ミスコンの動画見たよ……りりあちゃん、すごく、カッコよかった……」
紗凪が静かに呟く。
ウチはグシャグシャの顔を上げる。
「きっと、みんな勇気もらえたと思う」
「そう……かな……結構メチャクチャにしちゃったけど……」
「少なくとも、私はもらえた」
紗凪はウチとよしひとを交互に見て言った。
「あ、あのね……二人とも、転校しなくて大丈夫だよ……私、ちゃんと通うから……」
「別に無理して行くことない、あんなとこ……」
「うん、でも大丈夫……ううん、ホントは大丈夫じゃないけど、でもやらなきゃいけないことなんだって、思ったの……今度こそホントに、強くなるために……」
ウチは思わず紗凪に目を合わせる。
強く光る彼女の瞳は、今までの彼女のものじゃなかった。
「りりあちゃんは、ミスコンで私のなかのブスも殺してくれた。私はもう、自分をかわいそうだと思わない。人の目なんか気にしない……って、きっとまたツラくなって、どこかで泣いちゃうと思うけど……でも、二人がいれば、私、また立ち直れるって思ったの」
「紗凪……」
「りりあちゃん。私、生きるから。見てて、私が強くなるところ」
そう告げた紗凪は、どこまでもまっすぐで、誰よりも光り輝いていて……
ウチは、その眩しい姿に目を細めた。
紗凪はもう、ウチなんかよりずっと強い子だよ……
「なぁんだ、転校しないんスか。せっかく調べてたのに」
「よしひと……お前なぁ……」
呆れて振り返り、ウチは思わず目を丸くした。
よしひとは、その瞳からボロボロ涙を流してた。
「え……なにアンタ……泣いてんの……?」
「泣いてないっス︎……」
「いや泣いてんじゃん」
「泣いてないっス!」
よしひとは涙声で怒ってみせる。
「泣いてないっスけど! ぐすっ……紗凪さんが戻ってきてくれて、ホントによかったっス〜!」
そう叫んで、よしひとは紗凪に飛びついた。
ウチも負けじと抱きつく。
「二人とも……ありがとう……」
それからしばらくの間、ウチらは互いに抱き合いながら号泣してた。
いつかよしひとが言ったことを思い出す。
今の状況は、他人から見たら、ブスが三人狭い廊下で抱き合って泣いてるおかしな光景だろう。
でも、そんなのはウチらには関係なかった。
だって、ウチらはもう、人の目なんか気にしないのだから。




