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第63話 美少女JKモデル、敵と向き合う④


「した覚えねぇんだけど……」


「ふざけんな!」



 瞬間、彼女の目尻がキッと上がった。

 思わぬ大声に、ウチは驚いた。不良さえも、ギクッと身を動かしたのがわかる。


 まる子の形相は、鬼のようだった。



「わかってないなら、教えてあげるよ。山崎さんは不用意にブスを利用した。アタシらが必死に愛想良くして、必死に妥協して生きてるものをぶち壊して、武器にまでして、ミスコンを勝ち抜いた。アタシたちは利用された。幸せになったのはアンタだけ」



 まる子はそこまで言うと、



「もう、それ離していいよ」



 と不良に指示する。


 ようやく不良の腕から解放されて、ウチは地面に倒れ込んだ。

 思わず咳き込むウチを、まる子は容赦無く靴で踏みつける。



「う……ッ!」


「山崎さんさ、ずっとブスの代弁者のフリしてたけど、ホントは全然理解してなかったでしょ? 言葉がペラッペラだったもん。見え透いてたよ? 自信があって、幸せそうで、まともに自分の体で悩んだことがない。そういう人間の言葉だった」



 細い足に踏まれながら、ウチはなにひとつ反論できない。

 ウチも、よしひとの原稿を読んでただけ。なにも理解してなかったのは確かだ。



「バカなヤツらはみ〜んな騙されてた。でもアタシは知ってる。山崎さんはブスさえ見下してる。扇動するだけしといて、アタシたちを票としか思ってない。そんな詐欺師が、知った顔してブス語って、なにいい感じにミスコン勝ち抜いてんだよ……! なに着飾ってランウェイ歩いてんだよ……ふざけんなよ、同じブスのくせに……! ムカつくんだよ!」



 彼女は罵りながら、何度も何度もウチを蹴る。

 でも、全部のキックが軽くて、一度も痛みを感じない。



 それは、ケンカ慣れしてない女子の暴力だった。



「ちょ、まる子……アンタ騒ぎすぎだから……」



 茶髪は、まる子を止めようとする。

 ケンカ慣れしすぎてる彼女にとっては、ウチの反撃よりも、まる子の叫び声こそが危険だと思ったのだろう。


 でも、まる子はその腕さえ振り解く。

 愛らしい丸顔は、今や怒りと興奮で真っ赤に染まってた。



「ブス語るなら、ちゃんとアタシらと向き合えよ! こっちの辛さも知らないで、必死に生きてるアタシらを都合よく利用すんじゃねぇよ! ずるいんだよ、お前! アタシよりブスなくせに、アタシより綺麗な格好しやがって! アタシに……盗聴なんか……させやがって……! ふざけんなこのブス……! ブス……‼︎」



 叫び続けるまる子の頬には、涙が伝ってた。


 彼女の言い分は、グチャグチャだった。

 正論とか嫉妬とか、色んな感情で混ざり合ってて、本人だってなにを言ってるのかわかってないかもしれない。


 でも、それは心からの叫びだった。


 無様に這いつくばってるのはこっちだってのに、彼女はまるで悔しいのは自分だって風に、拳を握りしめてる。



 この子は、ウチが現れなければ、人生で一度も人を蹴ることがなかったのかもしれない。


 こんな犯罪まがいのことに手を染めることなんてなかったのかもしれない。



 それをさせるほど、ウチの行動は彼女のプライドを踏みにじってたのだ。



「もういいって。まる子行くよ!」



 茶髪の不良は、ついに力づくでまる子を押さえて、ウチから引き剥がした。

 まる子は腕のなかで未だに暴れながら、ウチを睨みつけてくる。



「山崎さんは絶対に優勝させない。どんな手を使っても落とす。アナタは、ミスコンにふさわしくない」



 その視線はナイフみたいに鋭くて、真っ直ぐで、ウチは直視できなかった。


 紗凪に、まる子に、ミスコンでウチの代わりに落ちた奴ら。

 どれだけの人間を、ウチは傷つけてたのか……


 その後もまる子は茶髪としばらく揉めてたけど、ようやく宥められて、ウチに背を向ける。

 先ほどまでは怒りで大きく見えてた姿は、後ろから見ると、ひとりのか弱い少女だった。


 言わないといけない言葉が、口をついて出てた。



「ごめん」




 その一瞬。




 目を見開いたまる子が全速力で戻ってきて、ウチの顎を思いっきり蹴り抜いていた。



 視界に真っ白な火花が飛び、意識がブチンと落ちる。



 それは、さっきまでの下手くそな蹴りとは違う、痛烈な一撃だった。




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