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第52話 美少女JKモデル、知る②


「あんなめんどくさいチャット送ったのに、家まで来てくれて……」


「めんどくさくないし。だって、紗凪が言ってんだもん。ねぇ、部屋入っていい?」


「ヤダ」



 ハッキリとした拒絶の言葉に、ウチは虚を突かれてしまった。


 紗凪がウチに反抗した――


 出会ってから、一度だってなかったのに……



「りりあちゃん。学校は、どんな感じ? みんなわたしの噂で楽しんでる?」



 紗凪は自分をバカにするみたいな調子で尋ねる。



「……全然。話題にもなってないよ」


「そっか。本人がいなきゃ、遊びようがないもんね。来るまで待ってるんだ」



 カラカラと、乾いた笑いが部屋から届いてくる。


 そんなこと、ないとは言えなかった。

 さなの予想は、ウチの経験上、多分正しい。



 ドアの先から、カチッと硬い音がきこえた。

 マウスのクリック音みたいなやつだ。


 パソコンの作業でもやってるのだろうか……?



「なら……このままズル休みしてれば、バカにされずに済むかな……」


「お、おぅ、そうだよ! あんなカスばっかいるとこ行かなくていいって。ウチなんてしょっちゅう休んでるし、紗凪は今までマジメだったんだから出席日数も平気っしょ? あ、そうだ! 配信すりゃいいじゃん。ファンにチヤホヤしてもらったらさ、少しは気持ちもアガるでしょ!」


「ハハ、ううん……残念だけど、配信はできないかな……」


「え、なんでよ」


「もう、身バレしてるから……」


「は……?」



 ウチは思わず聞き返してた。

 紗凪の声が、淡々と続ける。



「渋柿トメで調べるとね、わたしの顔写真が出るようになったの。誰かが執拗にSNSに流してるみたい。記事にされるのも、時間の問題」


「はぁ……⁉︎」



 ウチは慌ててスマホを出して検索する。

 渋柿トメの画像検索には、たしかに集合写真に映った紗凪が上がるようになってた。


 太った生徒たちの間で、肩身が狭そうに下を向いてる、陰気な立ち姿……



「誰だよ、こんなことしたヤツ……」



 体の底から怒りに震え始めたウチに、紗凪の弱々しい声が答える。



「わからないけど、愉快犯かもね……実は、一次審査の後にね、手紙が来てたの。りりあちゃんをミスコンから降ろさないと、わたしの秘密を暴露するぞって」


「……っ」



 一次審査の後……紗凪と手紙……


 ウチの喉が痙攣したみたいにひくつく。


 その現場は、ウチも目撃した。

 紗凪と廊下で出くわしたときに持ってたやつだ。


 あのときはラブレターだなんて思ってたけど、世間でのウチらの扱いが身に沁みた今となっては、ほとんどあり得ないとよくわかった。

 ウチらブスが自然に告白されるなんて考えは、奇跡を願うよりも能天気だ。



「なんでそれ言わなかったんだよ……」


「狙いがりりあちゃんなのはわかってたから、迷惑かけちゃいけないって思って……それに、バレてるわけないって思ってたし……まぁ、バレちゃったんだけど……」



 彼女の声は静寂の重さに潰れて消える。

 ウチは気づかないうちに拳を握りしめてた。


 んだよ、それ……


 じゃあ、紗凪はずっと、ウチをかばってたってこと……?


 カチッ――


 再び音がする。



「りりあちゃんに憧れてたから、バチが当たったのかな……」



 意味がわからなかった。



「は? バチ……?」


「りりあちゃんみたいに強くなりたいって願っちゃったから、ブスのくせに調子乗んなって神様とかそういうのに怒られたのかなって」


「はぁ……? そんなワケないじゃん。つか、紗凪にバチ当たんなら、ウチなんかもっとそうなるでしょ」


「違うよ、りりあちゃん……りりあちゃんは美人なの」



 紗凪の声は壁に阻まれて、もうきこえるギリギリの音量まで下がってた。

 ウチは扉に耳を近づけて、聞き取ろうとする。



「元の世界だと、りりあちゃんはモデルさんだったんでしょ? だから、りりあちゃんは心がブスじゃないの。りりあちゃん、知ってる……? ブスでいるってことがどういうことなのか」


「わかんない。教えて」


「汚れてくんだよ、心が」





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