表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/76

第51話 美少女JKモデル、知る①


 五時間目をサボって電車に乗り、数十分。

 よしひとからきいた住所へ急ぐ。


 昼の気怠い車内で揺られる間も、ウチは気が気じゃなかった。


 あの引っ込み思案で遠慮がちな紗凪が『たすけて』と言ったのだ。

 それだけで、異常事態なのはハッキリしてる。


 紗凪の家の最寄り駅は、ギリ都内に位置してて、田舎みたいなのどかさが漂ってた。


 ウチは、先走る心を落ち着かせながら、バスに乗り換えて紗凪の元へ向かう。

 地図アプリが告げる位置情報が、ナメクジが進むみたいにのっそりと、紗凪との距離を縮めてく。


 十五分も乗ってただろうか。

 ようやく目的のバス停に辿り着くと、ウチはバスの出口を飛び出した。


 目的の住宅地は、そこから走って一分しない場所にあった。

 家と家の感覚が広くて、周りを田んぼに囲まれてる、なんか静かなエリアだ。


 その端にある一軒家に『生駒』と書かれた表札がかかってた。

 ウチは一呼吸おいて、その下のインターホンを鳴らす。



 ピーンポーン――



 返事は、すぐに返ってきた。

 大人の女性の声だ。



 ――はい?


「あの……私、紗凪さんの友達の山崎って言います。紗凪さん、いますか……?」


 ――あらっ! ちょ、ちょっと待ってね。



 慌てたようにインターホンが答えて、音が途絶える。

 代わりに、



「さなー! お友達来てくれたよ! 山崎さんだって!」



 家の中からくぐもった声が漏れ聞こえてきた。


 家に直接言って呼び出すこの感覚、小学生以来だな……と思いながら待っていると、玄関ドアがガチャンと音を立てて開いた。

 顔を出したのは、驚くほど紗凪にそっくりな美人だった。



「ごめんねぇ。うちの子、ちょっと今朝から部屋出てこなくて……」



 紗凪の母親なのだろう。

 目が覚めるほどキレイなその女の人は、小首を傾げて眉を下げる。

 そんな困った顔さえ瓜二つだった。


 もし紗凪と並んで動画撮ったら、美人親子として鬼バズることだろう。

 まぁ、この世界でやったら大炎上だけどさ。



「私、紗凪さんに呼ばれてきたんです。入ってもいいですか……?」


「え、あらそうなの? どうぞどうぞ、上がって。ちょっと汚いけど」



 紗凪のお母さんが、ウチをなかへ招くので、靴を脱いでフローリングに上がる。

 汚いとは言うものの、別に普通の、こじんまりとした家だ。



「えっと……どうする? 居間で待ってる? 出てくるかわからないけど……」


「あ、いや。紗凪さんの部屋ってどこですか? ちょっと話したくて」


「二階だよ。案内するね」



 そう言って階段をあがり始めた紗凪母の後についていく。

 母が足を止めたのは、一番奥の部屋だった。


 扉には『さな』と名前が書かれた札が下がってる。



「さなー、お友達来てくれたよー。……じゃあ、お茶いれてくるからね。返事ないかもしれないけど、お話してあげて」



 紗凪の母が、ウチにどこか疲れたように笑いかけて、階下に去ってく。

 多分、近頃は毎日、こんなやりとりをしてるんだろう。


 ウチは、緊張で喉を鳴らした。

 紗凪に電話をかけてからのチャットは、未だに既読がついてない。

 声のかけ方ひとつ間違えただけで、拒絶されてしまうかもしれない……


 ウチはひとつ深呼吸すると、覚悟を決めてドアをノックした。



 コンコン――。



「……紗凪?」


「優しいね、りりあちゃん」



 返ってきたのは、今まできいたなかでも一番弱々しい声だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ