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学校1ブスの山崎さんが「ウチは美少女だ!」って暴れ始めた……  作者: 伊矢祖レナ
第4章 2次審査は桃色フリルの黒リップ
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第39話 美少女JKモデル、ガチで二次審査にケンカ売る③


 それは、ただのブーイングというよりは、脅迫に近かった。



 ブスは消えろ。

 キモいんだよ。

 死ね。



 下品を通り越した言葉が、ウチの元へ直接浴びせかけられる。

 けど、違和感があった。



 男子の声が多い……



 ランウェイを歩き始めながら、考える。

 この学校の男は、わざわざ文句を言いに来るほどモデルウォークに興味があるのか……?


 怒声は、いろんな場所からいっぺんに湧いて出てきてた。

 チラッと見る限り、悪口を叫んでいるのは運動部に所属していそうなイキリ男だらけ。


 偶然にしては、できすぎてる……


 ウチは直感した。


 これ、女が男そそのかしてやらせてんな……


 多分、彼氏やら仲のいいグループやらに頼んで、ブーイングさせてんだ。

 妙な取引だってしてるに違いない。


 ベタなやり口。ただの嫉妬。

 反吐が出る。


 突然の怒鳴り声に、驚かなかったかと言ったら、嘘になる。

 でも、それを顔に出すほどウチは素人じゃなかった。



 現役モデル、舐めんじゃねぇよ。



 雑音を無視して、まっすぐ歩く。

 負けず嫌いの心は、敵しかいないこの環境に、むしろ燃えていく。


 ただ、紗凪のことだけが心配だった。

 今は、出番の終わった候補者と入れ替えに舞台に押し出され、ウチの後ろについてきてるはずだ。


 ブーイングは、紗凪にだって容赦なく向けられてる。


 こんな怖い状況で、あの子、ちゃんと歩けてるだろうか……

 顔引きつってないかな……泣いてないかな……苦しんでないかな……


 ウチの胸は不安でいっぱいになる。

 けれど、振り返ることはできない。


 どれだけ酷い言葉を浴びせられても、手を貸すことはできない。


 だって、ここはランウェイの上。

 モデルは、ここではひとりで戦わないといけないから……


 ウチは舞台の端に辿り着いた。

 背後以外を客に囲まれ、ブーイングがより近く感じられる。

 目を引きつらせて叫ぶヤツ、品定めするみたいにニヤニヤ笑うヤツ、そんなんばっかだ。



 でも……

 最前列に詰めてる生徒たちだけは、真剣な瞳でウチを見上げてた。



 多分、ミスコンの熱心なファンなんだと思う。

 周りがバカにしたり悪口言ったりしてるなかでも、彼女たちだけは、ウチの姿を真っ直ぐに見てくれてる。

 それが堪らなくありがたくて、嬉しかった。



 ウチは、立ち止まって、彼女たちに心でメッセージを送る。



 ――ありがと、みんな。


 お礼に、教えてあげる。


 これが、山崎りりあの全部だよ。



 堂々とポーズをキメて、ウチ史上最高の笑顔で、その期待に答えてみせる。



 その瞬間……客席の空気が変わった。


 

 何人もの生徒たちが、目を見開く。

 前列の女生徒たちが、息を呑む。



 たった数秒の出来事――


 その短い時間で、ウチは沢山の人間を落としてた。


 感じたんだ。


 電撃みたいに速くて、火みたいに熱い感情を。



 ウチは心を彼女たちに残したまま、背を向けて来た道を戻っていく。


 会場には、まだブーイングが荒れ狂っていた。

 ウチを見下す、粘ついた視線も消えない。


 でも同時に、まるで砂のなかに煌めく宝石みたいに、熱っぽく語りあう声があちこちから聞こえてた。



「山崎さん……なんか、よくない……?」


「わかる……ちょっとかっこよかったかも……」



 ウチは思わず微笑みながら、舞台裏へと引っ込んだ。

 マジメに審査を楽しみに来たお客さんは、ウチの外見じゃなく、中身で繋がってくれた。

 それを充分に感じられる帰りだった。


 そのまま袖で、紗凪を待つことにする。


 すると、



「……りりあちゃん!」



 舞台から帰ってきた紗凪は、一目散にウチの元へ走って抱きついてきた。



「うぉっと!」


「りりあちゃんりりあちゃんりりあちゃん!」


「どうだった、紗凪⁉︎ ちゃんと歩けた?」


「できた! わたし、できた! 負けなかったよ!」



 彼女は顔を上げると、飛び跳ねるように言ってもう一度抱きつく。



 そっか……紗凪もやり遂げたんだ……



 ウチは彼女の頭を撫でながら、充実感でいっぱいになった。


 どうやらウチら、爪痕くらいは残せたらしい。




―― 第4章 2次審査は桃色フリルの黒リップ  了 ――




――――――――――――――――――


【第4章までお読みくださり、ありがとうございました】


もし少しでも楽しめた箇所があれば、お好きな形で応援いただければと思います。


また、コメントで一行でも感想をいただけると、心が回復するので。


もしよければ、お願いします。


――――――――――――――――――

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