第33話 美少女JKモデル、ガチでブスの現実に直面する①
トマトみたいに真っ赤な紗凪とフリフリピンクの店を出たあと、ウチはついに諦めてガリ用の服を売る店に行くことに決めた。
紗凪に案内を任せたところ、彼女は当たり前のように駅に向かい、新宿へ移動してウケた。
そもそも渋谷にないのかよ……
◇
駅前に着いて、混雑するファストファッションブランドを無視して歩くこと十分ちょい。
紗凪が入ってったのは、
――小さいサイズの店 フォーエス
というマジそのまんまの名前を掲げてる店だった。
なかは、当たり前だけど、ウチらが着れる服に満ちてた。
いや、これこれ〜って感じ。このサイズを求めてたんよ。
もはやめっちゃ落ち着く。チルいわこの店。
でも、服の種類はガチで数が少なかった。
しかも、使ってる生地もデブ用より少ないはずなのに、値段も割高。
ぼったくりじゃんね。マジ腹立つんだけど。
少数派クソだりぃ〜!
ただ、文句を言っても陳列されてる服が増えるワケじゃないし。
選択肢が少ないほど、モデルの腕が鳴るってもんよ!
ウチはマネキン紗凪を横に立たせると、二次審査の衣装をガンガン着せていった。
紗凪は、マジでなにを着せても似合ったので、逆に一着に絞るのにめっちゃ時間かかった。
◇
んな感じで、全部の衣装を決めて外に出た頃には、もう日が傾き始めてた。
ウチらは、帰り道に見つけた神社に入って、ベンチに座り込む。
「あー、さすがに今日は疲れたわ!」
ウチは伸びながら叫んだ。
マジ足が棒。
「こんなに買い物したの、生まれて初めて……」
ウチの隣で、紗凪が呟く。
手にはフォーエスの紙袋がいくつも提がってた。
衣装は一着に絞りはしたけど、他も捨てがたかったので全部買わせた。
あ、無理やりじゃねぇよ? 美容院に行く服すら持ってないって言うんだもん。
「そういやさ。アンタ化粧品とかどんだけ持ってんの」
溶けたチーズみたいに脱力しながらウチはきく。
ランウェイ歩くんだから、派手にしないと勝てないし。
普通の会話のつもりだったんだけど、ウチの質問で紗凪はワタワタと慌て出した。
「化粧品は、あの、あんまり持ってなくて……」
「あんまりって? どんくらい?」
「すいません盛りました……ゼロです……」
「ゼロ」
夕暮れの空でカラスがバカにするように鳴いてる。
「んー、まー、おけ。ホントは全部やってやりたいけど、もう疲れたし、当日はウチが全部やるわ」
「すいません、なにからなにまで……」
「いいのいいの。ウチがミスコン付き合わせたんだし」
「自覚あるんだね……」
ベンチの上の木から、小さいきのみがコツンと落ちてきて、紙袋に当たる。
もうすっかり秋だなぁ、って紗凪と無言でチルってると、公園の入り口から騒がしい声が響いてきた。
小学生くらいの集団だった。
みんな肥満児。
もう見慣れてるので気にもしないでいると、その後ろからヨタヨタと、有名塾の鞄を前後左右に抱えた少女が追いかけてきた。
それは、枝みたいに細い体をした、天使みたいな女の子だった。
どうやら、先で群れてる肥満児たちの分を運ばされてるみたい。
「あの、次の信号、もう越えたけど……?」
美少女が儚い感じでなぜかヘラヘラ笑いながら集団に小さく訴える。
すると、
「え、俺見てなかったわ」
「私もー。次の信号までね?」
群れからゲラゲラと笑いが起きる。
こんのブスデブガキども……
「お前ら――っ」
ウチが立ち上がろうとしたそのとき、なにかが腕を押さえて邪魔した。
振り返ると、
「行かないであげて……」
紗凪がウチを引き留めて、首を振ってた。




