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学校1ブスの山崎さんが「ウチは美少女だ!」って暴れ始めた……  作者: 伊矢祖レナ
第3章 ミスコン1次審査は唐揚げの夢を見るか
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第18話 美少女JKモデル、ガチで茶色に怯える③


 どこをどう逃げたのか、全然覚えてない。

 ただ、走って、走って、息を切らして辿り着いたのは、学校に一番近い公園だった。


 膝に手をついて初めて、上履きのまま走ってたことに気づく。


 公園内を歩く人々も、当たり前だけど、恰幅のいい人間がほとんどだった。

 ウチは、木陰にあるベンチに背中を預けて、ぐったりする。


 夏の青い空は、元いた世界となんも変わらなかった。

 それなのに、地上はこんなにも息苦しい。


 もう、元の世界には帰れないのかな……

 もしこのまま戻れなかったら……ずっとカースト最下位……


 いつもノリと勢いでパリピって生きてきたりりあちゃんも、さすがにツラくなってきた。

 自分が少数派だってことをどこに行っても見せつけられるこの世界、正直キャパい……

 つらたん……

 しんどみ秀吉……

 ぴえん……


 りりあちゃんの綺麗な瞳に透明な涙が浮かんできたそのとき。



「あ、山崎さんいたよ!」



 公園の入り口から声が聞こえた。

 顔を上げると、紗凪とよしひとが駆け寄ってきてる。


 紗凪は鞄を2つ携えていた。りりあの鞄を持ってきてくれたらしい。

 それに対して、よしひとのほうはまだ唐揚げの皿持ってた。

 もしかしてガチで恥を知らないんかなコイツ。



「ご、ごめんね……急に無理させて……嫌だったよね……」



 着くなり、紗凪がまず頭を下げる。



「なんで紗凪が謝んのよ。どっちかというと謝んのはよしひとでしょ」


「え、なんでっスか⁉︎ あっし、りりあさんのためにと思って用意したのに!」



 よしひとは心の底からショックを受けてそうだった。

 マジかよ。一周回ってもはやエモいわ。



「山崎さん、その……大丈夫……?」



 紗凪が心配げに隣に座る。



「大丈夫じゃない」


「そうだよね……ごめんね……」


「も〜、そんな拗ねてもしょうがないじゃないっスか〜。現実は変わんないんスよ〜?」



 よしひとの能天気な言葉が、どうしようもなく癇に障る。



「拗ねるくらいさせてよ‼︎」



 ウチの突然の大声に、二人は少し飛び上がった。



「どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも……! ウチのツラさをなんにもわかってない……!」


「山崎さん……」


「もう嫌! りりあを認めないこんな世界なんて、生きる価値ない! 死んでやる!」



 もう限界だった。

 今までの人生で受けたことのない仕打ちを受ける毎日。

 歩いてるだけで、座ってるだけで、ブス扱いされるこの社会。

 耐えられなかった。

 

 これなら、もう一度バニラに轢かれて死んだほうがいい。



「そんなこと……」



 怒るウチに、紗凪は手を伸ばしてきた

 けど、その手はウチに届く前にピタッと止まって、力なく膝の上に戻っていく。



「……ううん。山崎さんの言うこと、わたしも否定できないや」



 ウチは顔をあげる。

 横にいる紗凪は苦しげな表情をしてて、それはなんだか、ウチより傷ついてるみたいに見えた。



「……わたしもね、よく思うの。なんでこんな風に生まれてきちゃったんだろうって。どこに行っても人の目が気になって、みんなに笑われてる気がして。これなら、死んだほうが楽なんじゃないか、なんて……」


「……うん」



 ビックリする。

 誰もわからないと思ってた気持ちが、彼女の言葉の端々から届いてくる。



「そうなの。みんな、ウチのことバカにしてる気がすんの。こっちはふつーに生きてるだけなのにさ」


「ツライよね……」



 紗凪がウチよりツラそうに頷く。



「でもその、一応ブスの先輩として話させてもらうと……死んじゃうくらいなら、その前になにかやってみるといいよ……得意なこととか、夢中になれることとか……そうすると、意外と自分も捨てたもんじゃないんだなって……思えたりするから……」


「紗凪、なんかやってんの?」



 問いかけると、美少女の動きが凍りついた。

 迷ってるみたいに、大きな黒目をキョロキョロさせる。

 白い顔を赤面させながら、紗凪はか細く呟いた。


 

「その……山崎さんにだけなら……」


「よしひと、退場」


「え〜っ‼︎」



 名指しされたよしひとが子供みたいに地団駄を踏む。



「酷いっスよ〜! 仲間はずれは嫌っス〜!」


「ダメ。さっさとあっち行け」


「う〜!」



 彼女は、見るからに不服そうに頬を膨らませて、公園の端へ移動していった。

 ちょっとかわいそうだけど、致し方なし。



「んで、なにやってんの」


「その……」



 紗凪は言い淀んで、なかなか話し出さなかった。

 それでも、ついに決心したように薄桃色の唇を開いた。




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