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学校1ブスの山崎さんが「ウチは美少女だ!」って暴れ始めた……  作者: 伊矢祖レナ
第3章 ミスコン1次審査は唐揚げの夢を見るか
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第17話 美少女JKモデル、ガチで茶色に怯える②


「いやだから、なんで冷凍唐揚げなんて持ってるんスかって……」


「もちろん、太ってもらうためっス」


「はぁ??」


「ちなみに、まだまだあるっスよ。大量買いしてきたっスから」



 彼女が黒板前の机を指さすと、そこには同じ見た目の冷食の袋が積まれていた。

 恐怖に、体が震え始める。



「お前……ブス扱いをひっくり返すとか言ってたじゃねぇかよ……」


「そうなんすけど、まずは土俵に上がらないと、戦えもしないじゃないっスか」


「いやそうだけど……」


「でも、安心してくださいっス。体重測定は、最低限の足切りなんで。さすがに五十キロ以下なんて、普通に生きてたらならないっスもん。だからこれは万一の保険――」


「五十キロ……︎」


「え、りりあさん……まさか……」



 紗凪とよしひとの視線を受けて、ウチは吠える。



「だ……だって、しょうがないじゃん! 今まで必死に四十キロ台維持する努力してたんだから! 普通に生きてなくて悪かったな!」


「唐揚げ作戦! 決行っス!」



 よしひとが高らかに宣言する。

 同時に、ウチにその悪魔の皿を押し付けてきた。



「さぁ! まずはこれ、全部消費するっスよ!」


「た、食べないからね、りりあは! この体型キープすんのにどんだけ苦労してきたと思ってんの!」


「それ、この世界で最も無駄な苦労っス!」



 よしひとは躊躇なく切り捨てる。



「いいんすか? 規定体重いかないと、千代田節子に負けることになるんスよ!」


「ぐっ……」


「戦う前に負け犬決定っスよ! 一次で落ちたなんて、鼻で笑われること請け合いっス!」


「うぅぅぅ……」


「が、頑張って……!」



 紗凪は、ウチの隣でガッツポーズをしてきてた。

 その行動に、ウチは疑問を持つ。



「ちょっと待って。紗凪はなんでそんな他人事なの?」


「え……だって他人事だから……」


「いや、紗凪も出るんだけど」


「……へ?」



 キョトンとする紗凪に、よしひとが説明する。



「あ、この人、紗凪さんの名前も勝手に応募箱に入れてたっス」


「えぇぇぇ……ッ⁉︎」



 紗凪は、背中から床に崩れ落ちた。



「紗凪さん⁉︎」


「ぅぁぶぶぶぶぶ……」


「うわぁ! 泡吹いて倒れてるっス!」



 近くに駆け寄ると、紗凪は虚ろに呟き続けてた。



「なんで……勝手に……」


「いやだって、当たり前じゃん。アンタもブス扱いされてんだから」



 ウチは膝の先で壊れる紗凪に教え込むように言った。



「ウチらで常識変えてやんだよ。アンタだって、調子乗ってるブスどもぶっ飛ばしたいでしょ⁉︎」


「そんなこと……思ったことない……」



 ウチらに抱き抱えられて、なんとか椅子に戻ると、紗凪は死んだ目で宣言した。



「今日から断食します……」


「うわっ! 一次落ち狙いっス……!」



 紗凪は既に真っ白に燃え尽きてた。

 ウチは心のなかで舌打ちする。

 

 チッ、戦力にはならないか……



「まぁでも、つまり紗凪さんは今の時点で五十超えてるってことっスね。タッパもあるし、きっと問題ないっス」


「身長が憎い……」



 今にも死にそうな紗凪を尻目によしひとは納得げに頷くと、ウチに再び向き直った。

 もはや悪魔にしか見えない。



「じゃあ、残るはりりあさんっスね。まずひとつ目、はい、あ〜ん」



 よしひとは、フォークで刺した唐揚げをウチの前によこしてきた。


 熱々の揚げ物がみるみる迫ってくる。

 白い湯気と茶色の衣が、脂の存在を視覚と嗅覚で伝えてくる。


 近い……!

 カロリーが、近い……!



「ぅ、うわーッ! 太るなんてヤダーッ!」



 ウチは思わず、全力ダッシュで家庭科室を飛び出してた。




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