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学校1ブスの山崎さんが「ウチは美少女だ!」って暴れ始めた……  作者: 伊矢祖レナ
第3章 ミスコン1次審査は唐揚げの夢を見るか
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第14話 美少女JKモデル、ガチでカースト最上位ブスに遭遇する①


 今年の九月はムダに残暑の厳しい日ばっかで、生徒たちは一向に移り変わらない季節にうんざりしていた。

 

 教室のなかはデブばっかでクーラー効かせすぎだし、廊下出たらデブばっかで今度は蒸し風呂だし。

 なんなんこの世界。寒暖差で整っちゃいそうなんだけど。


 しかもここ数日のウチは、暑さと湿気以上に鬱陶しいものにも纏わり付かれてた。



「ミスコン出るっスよりりあさん。ねぇねぇ」


「嫌だ」


「面倒なことは、全部あっしがやるっスからぁ」


「イ・ヤ・ダ!」



 ウチは、よしひとをあしらいながら、ちんたらちんたらトイレに向かう。


 駐輪場での一件から、よしひとは四六時中りりあにつきまとってはミスコンへの参加を促してきた。

 授業が終わるたびに、一年のフロアからりりあのクラスまで秒で上がってきて、この攻勢。


 当然クラスメートのデブたちには注目されるので、このクソ暑い廊下に出るしかない。マジダルい。


 ミスコンの詳しい話は、よしひとが勝手に喋ってきた。

 なんか、この世界のウチの高校は、文化祭でミスコンを開くのが伝統になんだって。

 なんでも選考が結構本格的で、大体の生徒も楽しみにしてるらしい。


 そこに出ろと、よしひとはそう言ってるワケ。



「そんなぁ! なんでそんなに嫌がるんスかぁ?」



 よしひとがウチの周りをけん玉の球側みたいにぐるぐる回りながら絡んでくる。

 今日の格好は、全身に化石ワッペンがベタベタ縫い付けられた服だった。

 まず学校までそれ着てくる度胸なんなん。

 肝の太さ屋久杉かよ。



「なんでって、デブどもにバカにされるからに決まってんでしょ。つか、アンタ自分で出ればいいじゃん」


「それじゃダメなんスよ。りりあさんのほうがセンセーショナルでスし、なによりあっし、プロデュース側やりたいんで」


「いや自己中かよ……」



 彼女の言い分に呆れる。

 JYParkかお前は。



「んなら、他のヤツ見つけてこいって。ウチは負けるってわかってるとこにわざわざいかない主義なの。残念でした」


「でも、りりあさんは美人なんスよねぇ?」


「……あ? なにが言いてぇんだよ……」


「負ける気なんすか?」



 頭の中でプツンと血管の切れる音がする。

 暑さでイライラしてる今のウチの沸点は、クソほど低かった。



「この前ウチのことブスって言ったのはお前だよなぁ〜⁉︎」


「言ってないっスよ〜。あっしは一般的な話をしただけっス」


「それは言ってんのと同じなんだよ!」



 ウチはため息をつく。


 コイツに付き合ってると、体力をごっそり持っていかれる。

 怒鳴んのやめよ……エネルギーの無駄……

 

 トイレに辿り着くも、ヤツは平然とついてきた。

 それどころか、隣の個室に入って、壁越しに言葉を浴びせかけてくる。



「あっしの研究では、ミスコンで大事なのは外見よりもストーリーなんス! つまりりりあさんには勝算が充分あるんスよ! りりあさん、ゴールデンサークルって知らないっスか?」


「ゴールデンボンバーしか知らん!」



 ウチが個室を出ると、同時によしひとも顔を出す。

 手洗い場の鏡には、ゲッソリしたウチの顔と、目をキラキラさせるよしひとが映ってた。



「出たって、ウチにいいことなんもないじゃん。そんなもん乗るわけないし」



 ウチは手を洗って、ポーチからハンカチを取り出す。

 てか、汗で化粧が崩れてる。マジ下がる。

 夏死ね。



「え〜、でもミスコンで優勝すれば帰れるかもしれないっスよ?」



 その一言に、ウチは思わず拭く手を止めてしまった。

 鏡越しのよしひとと目が合う。



「だからなんでそうなるんだって……」


「だって、これぞバズストーリーじゃないっスか。カースト底辺のブサイクがミスコンで這い上がって下剋上! 優勝して帰還! 美しい流れっス!」



 興奮とともに、耳たぶにさがるアンモナイトのイヤリングが揺れてる。



「……帰れるって証拠は」


「ないっス」


「論外」


「えー!」



 トイレを出る。

 やっぱりコイツの自分勝手さには我慢ならん!

 結局、甘いことを言って自分のやりたいようにウチを操縦したいだけなんだ。


 ミスコンの応募が締め切られるまで、コイツの言葉は全部無視してやることに決めた。



「ねぇりりあさーん」


「……」


「ミスコン出るっスよぉ」


「……」


「りりあさんなら絶対優勝できるっス! 千代田節子だって目じゃないっスよ!」


「……」


「へぇ、面白い話ね」



 突然挟まってきた上品な声色に、ウチとよしひとは驚いて振り返る。

 

 そこには、いつかの不良リーダーが笑みを浮かべて立ってた。





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