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第一章⑷
彩花は、同じ大学のボランティアサークルで知り合ったニ個下の後輩。最初の印象は、誰にでも気が遣える礼儀正しい子。そんな感じだった気がする。
高校生の時、東日本大震災をテレビ越しに見た俺は、戦慄が走り、冷や汗の一筋一筋が頬をつたり、言葉を発するのを忘れたかのように、無言で崩れ落ちたのを今でも覚えている。あの時以上の恐怖は経験したことがなかったし、この先もないだろう。救助活動は数日どころの話ではなく何週、何ヶ月と続いた。自分の命よりも大切なものがあるんだ、と言わんばかりに瓦礫の山や海に立ち向かう人達を目の当たりにし、純粋にカッコいい、そう思った。その経験が自分とボランティアサークルを引き合わせたと言っても過言ではない。被災地に出向き、炊き出しをしたりゴミ拾いをする時間は何も考えず、目の前のことに集中できる。楽しいというと語弊があるかもしれないが、特別何かに秀でているわけではない自分が、社会や人の為に役に立っている、必要とされている、という実感が湧いてくるのだ。