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第一章⑴
第一章
「誠君、起きて。もう十三時だよ」
彩花の声で目が覚める。少しばかり目を開けると、天井にはすっかり日が差し込んでいる。
そうだ。完全に寝過ごしてしまった。今日は彩花との五年記念日。ディズニーランドに行く予定がすっかりもう昼だ。
「いてて」
ひどく頭が重い、昨日の酒がまだ残ってるようだ。
「こないだ一年くらい休職して海外いってたよ」
「婿入りするから地方にある妻の実家で暮らそうと思ってさ」
「ところで、誠は今、何してるんだ?」
昨日は、大学時代の友人達と数年ぶりに集まることになり、それぞれ近況報告が行われた。この日、来れなかった者たちも数人いたが、特に目立って仕事に傾注してるものはどうやら居ないようだ。卒業という旅立ちと共に、皆が足並みを揃え、スタートラインは同じはずだった。誰が一番出世するか、稼ぐのか。そんなことを卒業式で話しながら、別れを告げたはずなのに。彼らは敷かれたレールの上から外れたのだ。