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盲目の霊能者  作者: 縄奥
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1話


盲目霊能者



1話


 そこに一人の霊能者が居て何かを伺うように周囲を見回していた。そして数秒後、ある一点を見つめて「お前の名前は何と言う?」小声を発した。その状況を見た一人の通行人は「あの人、目が見えないの?」と、ポツリと呟いた。


そう… 彼は手探りで見えない何かに近づくと「ワシはこの通り目が不自由なんじゃ…」と、再び呟くと手探りで何かを軽く撫でた。そしてそれを見ていた通行人達は一旦、足を止めて「何をしているのか…」と、見入った。


そして彼は目に見えない何かと会話を始めると周囲の通行人達は頭を捻って「頭… 大丈夫なのか?」と、逃げるように足早にその場を離れた。背丈は170センチほどで着物姿の彼は「何故ここにいる?」と、独り言のように語ると軽く頷いて見せた。



 杖を片手に屈む着物の裾が軽く路面に振れると彼は「そうかそうか…」と、再び頷いてからその場にしゃがんで片手で何かを軽く撫でると「よしよし…ワシがあの世に導いてやろう」と、笑みを浮かべ何かの呪文を小声で言い放つと、一安心したとばかりに身体を起こして右手の平を縦に静かに歩き出した。


その光景を見ていた一人の女性は「霊能者?」と、直感で何かを感じていた。そして「あの… 霊能者の方ですよね?」と、唐突に後ろから声を発して歩き出した彼の足を止めさせた。すると、着物の彼は後ろを振り返り「はは♪ 見てましたか♪」と、軽く笑みしてお辞儀をして声の主に身体を合わせた。


彼女の名前は笑う子と書いて「笑子(えみこ)と、言い大学二年生です…」と、そして名字を佐々木と名乗った。すると着物姿の彼は笑子に笑顔で頷くと頭を軽く下げて「お嬢さん… お母さんと一緒にお散歩ですか?」と、小声で呟くと、笑子は一瞬驚いて辺りを見回して「お母さんがいるのですか?」と、彼に問いかけた。



 すると着物姿の彼は「はは♪ これは失礼しました♪ 照れくさそうに笑むと「お母さんはいつも貴女を見守ってくれていますよ♪」と、見えない瞼をチカチカさせて頷いた。すると笑子は「お母さんのこと… 見えるのですか?」と、呟くと彼は黙って頷いた。


それを見た笑子は少し緊張気味に目を大きく見開いて「貴方の… 貴方のお名前を聞かせて欲しい…」と、閉じられた瞼の彼の顔を見入った。すると、彼は「名乗る程の者ではありませぬ…」と、笑子に呟くと一礼して身体の向きを変えて杖を使って歩き始めた。


だがそんな彼を追い掛けるように歩き始めた笑子は「お願いです! お名前を!」と、歩く彼に再び声を掛けると彼は「安部の名声(めいせい)とでも言っておきましょう…」と、立ち止まって笑子を見ずに呟いた。笑子は「安部先生と呼んでも良いですか?」と、急ぎ早に返答すると、安部の名声は「コクリ」と、頷いて再び歩き始めた。


しかし安部の名声は歩きながら「先生と言うのは止めて頂きたいのですが…」と、呟くと笑子は「では師匠では如何ですか?」と、再び急ぎ口調で呟くと、安部の名声は「普通に安部で結構ですよ…」と、小声で呟いて笑みすると軽く頭を下げて「着いて来られても困りますが…」と、後ろを歩く笑子に照れ臭そうに微笑んだ。



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