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第4話 着衣攻防戦

 真ん中に2人が寝ても充分なキングサイズのベッドが置かれていた。


「ここでね、私、寝てるの!」


 そう言うとそのままベッドにダイブ。

 少し跳ねるようにして、けらけら笑いながら落ち着くと、あおむけに寝転がった。


 無邪気に跳ね回って半裸状態の身体が俺に刺激をし続けているアンジェラ。

 だが、ここで俺はこの建物の違和感がはっきりと分かった。

 その考えが、急速に高まっていたアンジェラに対する欲望を失速させた。


 この部屋が、建物が、綺麗すぎる。


 アンジェラはすでに10日以上、ここに住んで居ると言った。

 しかも、このベッドのシーツを使って簡易的な服を作ったと言ったはずだ。


 アンジェラが大の字で寝転がっているキングサイズのベッド。

 綺麗にベッドメイキングがされている。

 さらにこの部屋で10日以上住んで居た生活感が一切感じられなかった。


「ねえ、カズもこっちに来て一緒に寝ようよ。」


 こんな状況でなければ、というか俺がこの異常な状態に気付いてしまっていなければ、どう考えてもそれはお誘いにしか聞こえないセリフだった。


 だが、このアンジェラの誘いに深い意味がないことは解っていた。

 俺がその気になり欲望のままに突っ走ったらどうなるかは正直わからない。

 だが、この美女には、今、その気は、全くない。

 それが解っていた。


 俺はキングサイズのベッドに寝てこちらの様子を見ているアンジェラの目を意識しつつ、そのベッドの端に腰かけた。

 するとアンジェラは器用に俺の方にすり寄ってきた。


「なあ、アンジェラ。アンジェラはどこに流れ着いたんだ?やっぱり俺が流れ着いた、あの入り江みたいな砂浜か?」


 アンジェラには聞きたいことが山のようにある。

 ここに来るまでの記憶はないとしても、ここに辿り着いてからは覚えているだろう。

 この豪華と言っていいホテルのような、別荘のような、宿泊場所。

 食料はもう少し奥に木の実があると言っていた。

 そして魚を捕まえて食べたと言っていたが、料理の後のごみなどは一体どこに置いてあるんだろう。

 それに彼女を海辺で抱きしめたときに、不快なにおいはしなかった。

 とすれば、最低限その体を洗っている筈なのだ。


 疑問が大きな渦のように俺の中で暴れていた。

 それは大きくなっていた欲望、性欲を完全に後退させていた。

 俺の横にうつぶせで近づき、上半身を両肘で持ち上げてる姿勢から見える胸の谷間にも、その欲望は反応していない。


「えっ、違うよ、カズ。」


 その空色の瞳が俺に大きく開かれた。


「私の最初の記憶はこのベッド。ここに生まれたままの姿で寝ていたの。」


「えっ!」


「だからね、気付いたら何も来てない姿だったんだよ?だからそれが当たり前だと思ったんだけど、外に出た日に焼かれたり、森に入ったら小枝が刺さったりするから、しょうがなくこんなもの作ってみたの。」


 そう言ってシーツ時のその覆いを指でつまんでひらひらとさせた。


「あっ、そうか!ここに戻ったからもういらないね、これ。」


 そんなことを言ったと思ったらすぐに肩の結び目をほどいた。

 こちらが止める間もなく、その布を脱いでしまった。


 俺は慌てて、ベッドから跳び起き、扉近くに置いてあったスーツケースまで後退した。


 一糸纏わぬ姿は、この部屋に入ってくる夕陽に照らされ、恐ろしいくらいの美しさだった。


 夕陽の光が、少女の産毛を照らし輝き、栗色のセミロングの髪の毛が透過してくる光により、全身が神々しく、天使のような儚さを俺の瞳に焼き付いた。


 ただ、ただ、その立つ姿のこの世の者とは思えないほどの美しい光景に見惚れてしまった。


 見惚れていた俺にアンジェラが不思議な顔で俺を見た。


「カズ、どうかした。」


 ベッドの上で膝だちの半身に見惚れていた俺に、今度はこちらを向いて近づいてくるアンジェラは、官能的な美しさがプラスされた。

 大きめの胸とくびれた腰。

 その下に光る茂み。

 細く長い脚。

 しっかりと床を踏みしめるバランスの取れた脚の指。

 先に頭に渦巻く疑問がなければ欲望に身を任せてしまうところだった。


「ちょ、ちょっと、待ってくれ!アンジェラの身体が美しすぎて直視できないんだ!まずは一度ベッドに戻ってくれ。」


「それって、私を誉めてるの?」


「誉め言葉以外あるか!ベッドでちょっと待っててくれ!」


 俺はスーツケースを開き、中身をぶちまけるようにして、目的の物を探す。

 今自分が着ているようなジーンズやTシャツ、またはワイシャツ。

 ここら辺はあったが、さすがに女性用の下着が入ってるわけではないので、自分の下着が着れるかどうか。

 ジーンズを下着なしで履くことは流石に着心地は悪いはずだ。


 と考えていたのだが…。


 なぜかピンクのブラとショーツのお揃いがチャック付きのビニール袋に納まって出てきた。

 さらに同じようなデザインの薄い水色のものが出てきたのだ。


 一体俺は何者?

 というか何で他の衣服の類が男物なのに下着だけ…。


 いや、今は下手なことは考えずに、これを着せてしまおう。

 見た限りサイズ的には問題はなさそうだ。

 まあ、着せてみないと、特に胸については…。

 このキャリーバッグに入ってる男性用下着よりはいいはずだ。


 このキャリーバッグの持ち主が俺でない可能性が高くなってきていることは、いまは目をつぶろう。


「アンジェラ!この下着、ブラとショーツを履け!口答えは一切認めない!」


 そう言ってそのビニール袋を、ベッドに投げ込む。


「ええ、このままの方が楽だよお~。」


「もう一度言う。この下着を着ろ!普通の女性はそういうものを着ておしゃれとして楽しむんだ。」


 さっきの俺の言葉、誉め言葉に反応していたことを思い出した。


「アンジェラは確かにそのままでも十分に美しい。だが、そのブラとショーツを纏えば、さらにその美しさは俺を魅了すること、間違いなしだ。」


 その言葉にアンジェラの身体が、ビクッと震えるのを見逃さなかった。


「綺麗なアンジェラがさらに美しくなる。俺はその姿が見たい。」


「うん、わかったよ。カズを喜ばせてあげるよ。」


 アンジェラは夕陽の所為か、それとも恥ずかしさを覚え始めたのか、頬が赤くなっている。


 ベッドに立ち上がり、ビニールを開けてショーツを取り出す。

 一気に履き、股間の茂みが隠れた。

 俺はほっと小さくため息をついた。


 次にブラを取り上げる。

 裸を普通だと言っていた少女に、つけることはできるのだろうか?

 教えてくれと言っても、俺も経験がない。

 最悪ブラは着なくともいいか。

 そう思っていたのだが…。


 俺の心配は杞憂に終わった。


 見事にバストアップされたそのスタイルは、先ほどの自然な美しさはなかったものの、体のラインが非常に美しくなっていた。


 本来なら女性の下着姿さえ、恥ずかしさと欲望の板挟みになるところだが、先の裸体に比べれば、非常に穏やかな心になった。


「どうかしら、カズ。さっきより綺麗になった?」


「ああ、アンジェラ、すごく綺麗になったよ。」


「ありがとう、カズ。褒め上手ね。」


 そう笑うアンジェラは、ここに向かっていた時とは5歳以上年齢が上がったように、艶やかな笑みだった。

 この調子でその上を着せたいところだ。


「男物で悪いんだが、しっかりとこの服、来てくれないか?」


 俺はスーツケースから出したジーンズとワイシャツを持ち、先程座っていたベッドの端にまた腰をおろした。


「え~、やだよお。この下着はまだ可愛らしいし、カズが褒めてくれたから付けたけどさ。そんな窮屈なおもい、したくないよお。」


 そのままぺたんとベッドに座り込んだ。

 本当にブラもショーツもこの少女によく似合っている。

 サイズも、デザインも…。

 だが、何故?


 陽が沈むころまで俺たちは動かなかった。

 暗くなってきた。

 少し寒くなってきた気がする。


 そう言えばリビングに大きな照明があった。

 という事はここで電気が使えるはずなのではないか?

 そう思って、扉の付近を見た。


 あった。

 照明のものと思われるスイッチ。


 ベッドから立ち上がり、そのスイッチに近づいた。


 スイッチを入れた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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この作品が、少しでも皆様の心に残ることを、切に希望していおります。

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