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第22話 危ないほろ酔い

 カウンター越しにこちらを見ているアンジェラの胸元の汗が、俺の欲望を刺激してくる。


 いかん、いかん、いかん。


 俺は自分を叱咤して、グラスの液体を飲み干す。

 たった一杯で俺はどうしちまったのか。


 空になったグラスを持って、ワインを注ぎにカウンターまで行く。

 そこには満面の笑顔のアンジェラが、少しとろんとした瞳で俺を見上げていた。


「ねえ~、カーズ。どうして、これをテーブルに持ってこなかったの?」


「おいしいだろう、それ。」


「うん。」


「だからさ。この飲み物は気持ちよくなるものも入っていて、食事中に出すと、こればっか飲んじゃって、せっかく作った料理をアンジェラが食べれなくなっちゃうんじゃないかと思ったんだ。」


「えー、そんなことしないよ!私のためにカズが作ってくれたご飯、残したりしない、けど…。でも、これ、おいしい。もうないの?」


 ああ、もう飲んじゃったのか。

 そこそこの量はあったはずだが…。

 でも、俺もちょっと酔っちまってるかな。

 同じものは作れそうもない。

 仕方がない。

 もう一つワイングラスを出して、氷を入れた。

 そして残っている赤ワインを入れる。


「さっきのはもうないから、これで我慢してくれ。」

 グラスの淵にさしてあった果物をつまんでいたアンジェラの赤い顔が俺を見て、にっこりと笑った。

 テクテクテクと俺に近づいてきて、俺の腕にしなだれかかってきた。


「おいしくて、なんか気分いいよ、さっきのジュース。これもおいしい?」


「さっきほどは甘くないけど、飲みやすいと思うよ。あっちのソファアで飲もう。」


 しなだれかかってくるアンジェラから甘い吐息が俺の鼻腔をくすぐる。


 俺はアンジェラの腰を持ってソファアまで誘導して、座らせた。

 そのままクターとした感じで背もたれに寄り掛かる。

 そうなるとアンジェラの立派なお胸様がより際立つ。

 アルコールで体温が上がったのか白い肌に赤みがさしていて、胸元に汗が輝いて見える。


 俺はそんななまめかしいアンジェラから目を逸らし、ソファア前のローテーブルに氷入りの赤ワインを置いた。

 その横の空になった俺のグラスに、残った赤ワインをすべて注いだ。


 俺は完全に寄り掛かって顔が天井を向いているアンジェラの横に座った。

 すると、けだるそうに上半身を起こし俺に顔を向けてきた。

 ふわっと栗色の綺麗な髪が俺に少しかかってきた。

 この匂いはバスルームにあるシャンプーの匂いのはずだが、俺の匂いとより甘く感じた。


 明らかに酔った顔が、アンジェラの少女っぽい動作すら妖艶にして見せてくる。


「まだ、飲むか?」


「当然だよお~。カズう~。」


 少しろれつが回らなく始めたアンジェラがそう言って、目の前のグラスを持って、俺のグラスに軽く触れさせる。


「かんぱい~。」


「ああ、乾杯。」


 アンジェラの陽気な言葉に合わせて俺も呟く。

 そのままアンジェラはグラスの半分ぐらいの量を飲む。


「うん、これもわりゅく、ないね~。」


 そう言うとまたすぐに残りを飲み干した。

 そのグラスを落としそうになったので、俺は慌ててアンジェラを抱きかかえるようにして落ちそうなグラスを受け止めた。


 そのグラスをテーブルに置いた。


 そのまま元のソファアに戻ろうとしたら、アンジェラが俺に抱き着いてきた。


 熱を持ったアンジェラの肉体が俺を包む。

 甘い香りが俺を包んでそのままソファアに倒れ込むように座った。


「ねえ、カズ。なんかほわほわするよ~。」


 う~ん、完全にアンジェラは酔っぱらったな。

 俺が少し倒れ込むようにしている上半身に、アンジェラは自分のお胸様を押し付けるように抱きしめられた。


「うみでえ~、わたしにい~したように、また、してほしいよお~。」


 そう言うと目をつぶって桃色のプックリとした唇を突き出すように俺に迫ってきた。


 つい、昼の海での感触を思い出していた。

 そのものが今目の前にある。


 もう、我慢の限界だ!


 俺も酔いに任せて、その甘く香る瑞々しい唇に俺のものを合わせようとした。


 が。


 アンジェラはそのまま俺の顔を掠めてその体重を完全に預けてきた。

 そして…。


 スー、スー、スー。


 寝息が俺の耳に届いてきた。


 酔っぱらって、そのまま眠ってしまったようだ。

 俺も疲れていて、少し眠気があった。

 そりゃあ、アンジェラも疲れているよな。


 アンジェラはなまめかしいブラとショーツだけで俺に覆いかぶさっている。


 だが、すでにその顔は少女の寝顔だった。


「ふう~、全く困ったお姫様だ。こんなに綺麗で素晴らしいプロポーションをしているのに、こんなに無防備じゃな。記憶がないとはいえ、羞恥心まで忘れてしまうものなのだろうか。確かに、始終裸でいれば、こう言ったもので締め付けられるのは気持ち悪いかもしれないが…。」


 俺は下着姿で俺を抑え込んでいる天使のようなアンジェラの身体を下から少し持ち上げ、とりあえずソファから床に抜け出た。


 ん、天使?


 自分でアンジェラの可憐さを形容するために使った単語に引っかかった。


 何かとこの「天使」という単語が結びつきそうだったが、俺自身にもアルコールが体内をめぐっていて、軽く思考に靄がかかっているようだ。


 まあ、大したことではないと思うんだが。


 それよりもソファにうつ伏せで眠りに落ちたお姫様を、2階のベッドまで運ぶことを考えると少し憂鬱になった。


 こんな下着姿の美女をしっかり抱いて、ベッドに連れて行けるというシチュエーションは全男性の憧れるものだろう。

 いつもの俺でもそう思う。


 だが、今の俺は疲れと酒酔いでかなり足元が危うい。

 いくら軽めのアンジェラでも、抱えてあの階段を上るかと思うと、さすがに気持ちが折れそうになった。


 起きてくれないかな。


 そんなことを思って幸せそうに寝入っているアンジェラの頬を指でつついてみた。


 ビクッと体が動いた。

 がそこでまた止まる。

 もう一度さっきよりも強めに頬をついてみた。

 急に右手が顔の周りの虫でも払うかのような動きをした。


 俺はびっくりして少しアンジェラから離れた。


 右手を動かしたのち、器用に狭いソファの中で、体を回すように寝返りを打った。


 アンジェラの見事なピンクのブラに包まれた双峰が上を向く。

 白磁のような肌のお腹が少し赤みを帯びて色っぽい。

 さらに下腹部から股間を隠す神秘のピンクの布から、細く美しい脚が伸び、右足の先は床についていた。


 本当に彫刻品のように美しい体だ。

 彫の深い美貌と相まって、天使とも女神とも表現できるアンジェラを、ただ見惚れてしまっていた。


 さすがに起きるまで見惚れているわけにもいかないと、重い腰を浮かす。


 この状態ならお姫様抱っこをすることはできるが、俺は視線を半円を描くようにして2階に伸びる階段に視線を向ける。

 体がしっかりしている時なら問題はないが、お姫様抱っこした状態であの階段を上るのは、かなりリスキーに思えた。


 仕方ないか。


 俺は上半身をかがめ、アンジェラの背中に手を回す。

 寝息を続けるアンジェラの顔を俺の右肩にのせるようにした。

 アルコールを含んだ甘い吐息が俺の右耳をくすぐった。


 欲情しそうになるのを懸命に抑えてアンジェラの上半身を起こす。

 が、アンジェラに起きる気配はない。


 一つため息をついて、俺は腹部から腰に手と肩を移動して、一気に持ち上げた。


 お姫様抱っこよりも安定が保てそうだ。

 アンジェラを肩に担ぎあげて、俺は階段の手すりをしっかりと持って、階段を一歩ずつ上がっていった。


 アルコールのせいか、単純に体力がないのか、ベッドにアンジェラを倒れるように横たえると、そのままベッドサイドにへたりこんでしまった。


 この部屋に来るまでアンジェラは一切起きなかった。


 腰からお尻にかけて右手で抑えていたため、アンジェラの柔らかい肌の感触がまだこの右手に残っている。

 アンジェラの立派なお胸様も俺の背中に押し付けるようにされていたため、俺の股間の充血が激しい。

 ただ、体力もほとんど底をつきかけていて、そんな息子をなだめる気力がなかった。

 しばらくすれば俺の息子さんも落ち着くことだろう。


 結構な汗をかいていることに気付いた。

 俺は顔を洗おうと、洗面台に向かった。

 できれば汗を洗い落としたいところだったが、そこまでの気力はなかった。


 洗面台の蛇口を開き、流れ出た水を掬い上げて顔を洗った。

 少しすっきりした。


 タオルで顔の水を拭いながら、ベッドに戻ろうとした時だった。

 開けっ放しの寝室のドアの向こうに、馴染みのない光が微かに点滅しているのが見えた。


 何の光りだ?


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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またいい点、悪い点を感じたところがあれば、是非是非感想をお願いします。

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