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夏祭りの夜道に金魚は見ていた  作者: 駒城亜樹
8/16

不器用な教師 途方に暮れる僕ら

呉藤友成が遺体で発見された。


場所は呉藤の自宅アパート近くの河川敷

夜は人気は全く無いので目撃者もいない。


呉藤はこの日も学校の用事を全て片付けて

そそくさと学校を後にしていた。

掃除用務員のおじさんが「お早いですね?用事でもあるのですか?」と声をかけると


「ええ。約束がありまして。」とだけ言って

立ち去ったらしく。約束の内容や会う相手は解らずじまい。


呉藤は河川敷にて刺殺されていたらしい。

正面から心臓を一突きだったと。

西宮の親父さんが話してるのを、西宮がコッソリ聞いてきたらしい。


「一番怪しいとおもったのになー」と頭を抱える僕の横で西宮が何かを考えている。

目線の先には呉藤の所持品を盗み撮りしてきたスマホ。「無いわね。あれが」と呟いている。


「無い?何が?」と疑問をぶつける。

するとスマホを指差しながら彼女が口を開く

「見て。財布や免許証、普段読んでるらしい小説や新聞はあるのに、あいつが普段持ち歩いて生徒の様子をメモしたりしてる手帳がないのよ。」


あ!確かに。

呉藤の情報に学年主任をする役柄なのか、

いつも手には分厚い手帳を持ち歩いていると情報に書いてあったんだった。


「あ。もしかしたらさ。呉藤も事件を調べていたか、たまたま犯行を見てしまったとかだったら?」

僕が彼女に何気に訪ねると、西宮も納得したらしく。


「でも、何故なんだろう?目撃したにしても、普通なら警察に相談しない?仮にも学年主任をしてるんだし。」


「うーーーん。そう、だよね?何でだ?」


呉藤友成は学年主任のせいか性格は固く、

校則違反も見逃さず厳しいので生徒からはあまり好かれてないらしい。


疑問が頭の上にいっぱいの僕らのもとに

朋恵さんがやって来た。

[早く知らせたくてたまらない!]と顔に書いてある。


「あの呉藤って先生、好きな生徒いたみたい。」


「「え?それマジ?」」僕らの声がハモる。

朋恵さんがそんな僕らに笑ってしまってるのを尻目に、彼女が調べてきた情報に目を通す。


学年主任が唯一接していた生徒

それは最近被害にあった風間優希だった。

彼女だけは教師や生徒に分け隔てなく接していたため、呉藤も彼女に気を許し不器用ながらほのかに想いを抱いていたらしい。(掃除用務員のおじさんがいつしか呉藤から聞いていたみたいだ。)


そんな優希が金魚鉢殺人事件の被害者と知ったら?

僕も痛いほど解る。仇を討ちたくて、早めに業務を終わらせ、毎日独自で孤独に調べていた呉藤の姿が目に浮かんだ。


「用務員のおじさんがもう一つ教えてくれてさ。

呉藤は犯人が誰なのか、わかったみたい。」

朋恵さんがおじさんから聞き出した話だと、呉藤が殺害されたあの日におじさんに呉藤はこう話していた。


『私の読みは間違ってなかった。あいつに会って確かめてきます。』とおじさんに直接伝えてきたと。

おじさんは警察に伝えるべきと言ったが聞く耳も持たずに去ってしまい、彼も成す術がなかった。


「それで、仇を討つ前に犯人に返り討ちにあったんだな」僕がポツリと呟く。


「残念だけど後藤佑規はアリバイあったよ。呉藤が犯人に接触したであろう時間帯に、自宅近くのコンビニで女性と歩いていたみたい。」朋恵さんが悔しそうに言う。


「せめて、手帳が見付かれば。」

西宮の呟きに、僕は項垂れるしかなかった。




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