決戦開始
その日の夜22時。
僕らは犯人の自宅近くにいた。
くしくも犯人が行動を起こすであろう2週間過ぎだった。
必ず行動を起こすであろうと西宮父の言葉と
次の犠牲者保護のため、僕らは二手に分かれていた。
僕と西宮父と朋恵さんが犯人の追跡
西宮母と西宮が次の犠牲者保護
入念な打ち合わせの後、ここにいる。
[ようやく仇が打てる]
そんな気持ちがあるからか、いつもより心拍が早い。目を閉じて深呼吸を繰り返す僕に
西宮父が[大丈夫だ]と肩に手を置いてくれたので少しずつ心拍が落ち着くと
不意に容疑者が姿を表す。
間違いない!アイツだ。
震え出す拳をもう片方の手で抑え込む。
容疑者はスマホを確認すると被っていた帽子を
深く被り直すのが見える。
警戒してるのか、慎重に移動してるが幸いなことに尾行には気づいてないようだ。
大分長く歩いて、着いた場所はとある学校の校庭
『犯人は最後の犠牲者を必ずここに呼び出して、復讐に終止符を打つだろう。』打ち合わせ時の西宮父の言葉どおりに容疑者は校庭に入った。
校庭にはもう一人いた。
そう、[最後の犠牲者]になる予定の人物だ。
西宮母が彼女に事情を説明してあるから、彼女の命は保証されているため、囮として容疑者の指示に従ってもらうことにしたのだ。
容疑者は復讐の鬼の仮面を一時外し、彼女に優しく声をかける。
彼女もペコリと、頭を下げ容疑者に近付いていく。
『悪いね?こんな遅くに呼び出して。』
僕のイヤホンから容疑者の声が聴こえる。
そう、彼女にはスマホをもう一台持たせて
僕ら五人のイヤホンに声が届くようにしてある。
『どうしたんですか?学校では話せない。昼間だと誰かに見つかったら、変な噂がたつからここに来て欲しいって』
『ああ。君にどうしても聞きたいことがあってさ。
それに気づいてるだろう?此処がどこか?』
彼女が辺りを見回し、ゆっくり頷く。
息を飲む音が伝わる。
『だろうね?じゃあ、忘れてないよね?あの子、
平坂愛花梨の事も。』
彼女にゆっくり近付く容疑者。彼女、結城 岬も後退る。
これ以上は危険だと西宮父が飛び出し、容疑者と結城さんの間に割って入った。
僕も結城さんの後ろに回り彼女を保護する。
容疑者もまさか尾行されていたと解らなかっただろう。慌てて逃げようとするが、西宮母と西宮が逃亡を塞いだ。
「さあ、もうすぐ警察が来る。それまで、動機とやらをきちんと教えてもらおうか?」
結城さんを僕に任せ、容疑者に近付く西宮父。
「何故、私が犯人だと?」
動機や証拠を提示してないせいか、犯人は開き直る。
「残念ですが、僕らが既に動機や証拠を掴んでます。観念してください。ーーーー斉籐陽一郎先生」
僕は彼を睨み付けながら、その言葉を告げた。