濡衣
嘘だろ。
夢なんだろ。
ここはどこだ。
俺は誰なんだ。
『Pipipi Pipipi...』
「うわっ」
ここはどこだ。
家だった。
目覚まし時計がなっていた。
なんだ。夢か。
それにしても最近、朝は体が妙に重い。
疲労が俺を押しつぶしているような重さだった。
何とか登校できた。
なかなか起きれなかったために、いつもより十分ほど遅れた。
十分遅れても登校してるのは、見た限り俺しかいない。
誰もいない廊下を経由し、俺のクラスへたどり着いた。
鈴木がいた。
妬ましいほど幸せな鈴木が。
彼は、なにか作業をしていた。
俺は席に着いた。
一応、疑問を投げかけてみる。
「なにかあったの。」
心無い声で。
「ただの悪戯さ。」
鈴木の机には、『死ね』『殺す』『クソ』などが油性ペンらしきもので書いてあって、悪戯のレベルではない光景だった。
一瞬、俺は彼を心配した。
だが、昨日の帰り道の場景が浮かんだ途端すぐに嬉しさが込み上げてきた。
この流れなら、昨日は佐藤、外村。
今日は、鈴木が付き合ったことを妬んだ女子ってところか。
だが、今までの佐藤と外村とはレベルが違った。
一日目は机をグランドに投げ捨ててあった。
二日目は机に油性ペンで落書き。
そして日にちが変わった―
今日は鈴木が、いじめられてから三日目。
今日は一番に来た。
教室に入った瞬間、悟った。
黒板にデカデカと書いてある。
〝女タラシの鈴木〟
〝男の友達がいない鈴木〟
〝家で泣いてる鈴木〟
予想はついていた。
驚きはしない。
肝心の鈴木は、まだ登校してこない。
また一人。また一人。
登校してくる。
が、誰もが黒板の文字を見て見ぬふりをする。
そんな中、鈴木と付き合っている俺の初恋相手が登校した。
黒板を見るなり、一瞬硬直したが、黒板消しを持って消そうとした。
「みんな、おはよう~」
その時。
神様は悪戯をした。
担任の入沢先生が教室に入ってきたのだ。
入沢は驚いていた。
入沢は無言のまま、すぐに彼女を席に座らせようとする。
彼女は何とか消そうとするが、入沢の説得で思いとどまり、涙目になりながらも着席した。
朝の騒音が嘘のようになくなる。
この静寂を打ち破ったのは入沢だった。
「これ、やったの誰だ?」
自己申告する者はおろか、口をあける者さえいない。
「もう一度聞く。これやったの誰だ?」
誰も口を開かない。
「この出来事については他クラスに他言するなよ。では、朝学活をはじめる。」
その時、鈴木が入ってきた。
「すいません。遅れました」
「はやく席につけ」
「はい」
クラス内は不穏な空気に包まれていた。
だが、何もなかったかのように日常に溶け込んでいく。
これで、また普遍の無い、憂鬱な一日が始まる。はずだった。
それは、昼休み。
『生徒の呼び出しを致します。1年1組の…』
佐藤、外村あたりだろうな。もしくは女子。
『福田君。一年一組の福田君。今すぐ、生徒指導室にきなさい』
呼び出されたのは、確かに俺だった。
どうせ事情聴取かなにかだろう。
そう思いながら生徒指導室へ向かった。
ガラガラガラ...
「失礼します。」
「来たか。まぁ座れ。」
俺は席に着いた。
5秒の静寂。
疑問を投げかけた。
「僕になにか用ですか。」
「それなんだが。」
「おまえなのか? 黒板に鈴木の悪口書いたのは」
この質問には度肝を抜かれた。
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