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王子に婚約破棄された令嬢は、溺愛してくる義弟と結婚します

作者: 奥山秋悲
掲載日:2022/12/16

初めてで最後の投稿になると思います。

面白いと思ったら、感想を頂けると嬉しいです。

是非お楽しみください。

「ルアーナ姉さん、いやルアーナ、僕と結婚しよう」


「は、はい!?」


 私、ルアーナ・ギエナスは自分の耳を疑った。


 今、目の前で跪き、婚約指輪を差し出しているのは、公爵でも王子でもない。


 聞き慣れた声音、見慣れた金髪、今となっては追い越された身長。


そう、私の義弟シェイル・ギエナスだ。


「姉さん、返事を聞かせて欲しい」


「え、ちょ、え!?」


 なぜこんなことになったのか、時は一週間前にさかのぼる。





「ルアーナ、お前との婚約は今日をもって破棄する」


 その声には失望の色が滲み出していた。


 私を見下ろす赤い瞳は、まるで罪人を見るように鋭い。


「え?」


 私は、状況を飲み込むことが出来ず、思わず疑問の声を溢す。


 それを聞いた、セグロン王国第二王子にして私の婚約者、リンダ・セグロン様は嘲笑うように再び口を開いた。


「聞こえなかったのか? お前との婚約を破棄すると言ったのだ」


「リ、リンダ様……なぜ……」


「なぜかって?」


 リンダ様は、ニヤリと口角を挙げる。


「私は本当の愛を見つけたんだ。お前との偽りの愛は終わりだ」


 気付けば、顔も見知らぬ美少女がリンダ様の隣に立っていた。


「そんな……」


 こうして、私は王宮を追われることとなった。





 リンダ様と婚約してから王宮生活を過ごしていた私は、五年ぶりに実家へ戻った。


そんな私を待っていたのは、義弟のシャイルだった。


「姉さん、婚約破棄されたって本当!?」


「ええ、本当よ」


「ああ、今日は最高の日だ!」


 シェイルは神に感謝するように天を仰いだ。


「なんで喜んでるのよ」


「なんでって、最愛の姉さんが晴れて自由の身になったんだ。喜ばずにはいられないよ」


「自由の身って……」


「僕がどれだけこの時を待ちわびたか」


シャイルがグッと顔を近づけ、至近距離で私を見つめる。


 顔立ちに残っていた幼さはどこへやら、すっかり大人になったイケメンが目の前にいた。


 水色の綺麗な瞳、真っ直ぐ伸びた長いまつ毛。そして、眩しいほどの金髪。


 身長もいつの間にか追い越されている。


「リンダ王子はなんてもったいないことを……。姉さんはこんなに可愛いというのに!」


「ちょっと近い、近い!」


「当たり前だよ。僕はこれから失われた五年間を取り戻さなきゃいけないんだから」


 シェイルは、逃すまいと言わんばかりに私の両肩にそっと手を添える。


 添えられた手が思った以上に大きく、ドキッとしてしまう。


「べ、別に逃げないから……」


「言ったからね? もう僕を置いてどこにも行かないと約束して欲しい」


「行かない、行かない」


 私の言葉が信じられないのか、シェイルは疑惑の視線を向ける。


「なら姉さん、僕から一つ提案があるんだ」


「なによ……」


 私が訝しんでいると、シェイルは後ろ手に小さな箱を取り出して跪いた。


「ルアーナ姉さん、いやルアーナ、僕と結婚しよう」





 そして、今に至る。


「姉さん、僕は本気だ」


「そ、そんなの見たらわかるわよ」


 本気なんのがわかっているからこそ戸惑っているのだ。


 どこの世界に義姉にプロポーズする弟がいるだろうか。


 まぁ、こうして目の前にいるわけだが……。


「もしかして、世間体を気にしてるの?」


「そ、それもあるけど、そういう問題じゃ」


「僕は気にしないよ! 僕と姉さんに愛があれば周りの目なんて関係ないさ」


 シェイルは、跪いたまま顔を上げ私の手を取った。


 改めて、直接感じる手の大きさと体温に再び胸が高鳴る。


 しかし、これに騙されてはいけない。


「そういう問題じゃないわ」


「なら、将来性が心配?」


「ま、まあ、それはそうだけど……」


 確かに、結婚に将来性は大切だ。


「それなら姉さんはなんの心配もしないで欲しい。実は立ち上げた事業がようやく軌道に乗り始めたんだ。姉さんと子供を養うだけの収入は保証できるよ!」


「そうなの!? 凄いじゃない」


「そうでしょ、そうでしょ。僕、姉さんに褒めてもらうために頑張ったんだ」


 って、私はなにを感心してるの。


「でもシェイル、そういう問題でもないわ」


「じゃあ、ギエナス家の評判が下がるから?」


「い、いや……」


 理由の問題ではないということがなぜ伝わらないのだろうか……。


「それなら心配いらないよ姉さん。第一王子のことは知ってるよね?」


「ええ、それは知ってるけど……」


 実は第一王子は姿どころか名前さえ知り得る者はいないのだ。


 国王陛下は存在すると言い張っているが、情報を秘匿する理由も明かされていないため、本当は存在しないのではという噂が広がっている。


 結果、第二王子であるリンダ様が実質第一王子のようになっているのだ。


 それとギエナス家の評判になんの関係があるというのか。


「実は、僕が第一王子なんだ。だから心配いらないよ、ギエナス家の評判が落ちることはない」


「へぇ、そうなのね……って、え!? え? え? ええぇぇええええ!!」


「黙っててごめんね、姉さんと対等でいたくて秘密にしてたんだ」


 秘密にしていたことはどうでもいい。問題なのはその内容だ。


「だ、第一王子って、え? 本当なの?」


「本当さ、信じられないなら今度国王陛下に会いに行こう」


 そこまで言うからには本当なんだろうが、にわかには信じられない。


「とりあえず、家の評判は落ちないから安心して欲しい」


「まあ、確かに安心……って、違う!」


 危うく結婚するところだった。


「なにが違うんだい姉さん」


 問題は私たちの世間体でも家の評判でもない。私が、シェイルを恋愛対象として見ていないということだ。


「私、シェイルのことは弟として愛しているけど、一人の男性としては見れないわ」


 これでシェイルも諦めて、


「これでも?」


次の瞬間、立ち上がったシェイルが私をぎゅっと抱きしめた。


 さきほどまでとは違い、低く落ち着いた声が耳元で響く。


「シ、シェイル!?」


 突然の出来事に思わず声を上げるが、想像以上に抱きしめる力が強く逃れられない。


 そのせいか、体温と共に痛々しいほどに私への愛が伝わって来る。


「これから僕は、姉さんに毎日毎日沢山の愛を注ぐよ」


 甘い低音が脳みそまで届き、ゾクッと全身が痺れる。

 

溺れてしまいそうだ。


 このまま愛に溺れるのも悪くないのかもしれない。


 考えてみれば、誰よりも私を愛し、生涯養ってくれる経済力もある第一王子。


そして、申し分ないほどのイケメン。断る理由など探す方が難しい。


「だから、僕の奥さんになってよルアーナ」


「……はい」


 気付いた時にはそう答えていた。


こうして私は、五年ぶりに再会した義弟の妻となった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ハッピーエンド! 押しの強いさと愛情に負けたな(笑) [気になる点] 第二王子がどうなったかが少しは気になるかな、お姉さま開放?したことで少しは軽いバツで済むかな(笑)
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