サクラとアオ
サクラとアオ -1-
「だったらお前は思うのか?」
思わない。
思わない、けど。
思ってるって風にしなきゃいけないことだって
あるじゃないか。
ウソっていうのとは違って、こう微妙で。
期待に応えるっていうか。
サクラとアオ -2-
「それで?」
それで?
それでってことは、ないよ。
それで。
それで
終わり。
サクラとアオ -3-
「あたりまえ、だなんてよく言うぜ」
基準は曖昧だけど確かにあるんだ。
どうしようもなく、転がってるんだ。
それこそ半歩も行かないうちに
ぶつかってしまうほどには
あたりまえ、に。
サクラとアオ -4-
「正直だったろう?」
そうだけど。
そうなんだけどさ。
それって
ひどく残酷でもあったよ。
サクラとアオ -5-
「人を傷つけた、だなんて今更なこと言うな。
初体験でもあるまいし」
確かに今までだってあったさ。
あったけど。
古い罪悪感はいつまでも残ってはいなくて
薄らいでいて消えているに等しいほどで
今更だけど
今更でも。
毎回、初めてって気に、なるんだ。
サクラとアオ -6-
「なんのため?」
なんのためかなんて考えない、というか。
考えて動いてるんだけど。
考えてないふりして逃げてるんだ。
自分のためって言って良くない時やなんかには。
サクラとアオ -7-
「弁解させてやろうか?」
いいね、それ。
なんだか
ゆるされてるみたいだ。
サクラとアオ -8-
「言う前に気づけだなんて、ムシが良過ぎねぇ?」
察してほしいって思うのは
少なくとも罪じゃないだろ。
どうせ誰も何も本当のことなんて言ってないんだから。
むしろ、言ってることより察したことの方が
真実に近かったりもするんだから。
サクラとアオ -9-
「それで救われてるってこともあるだろ?」
だから、文句を言うなって?
そういうことか?
サクラとアオ -10-
「じゃあ?」
じゃあって、そんな。
そんな言い方は。
どんな言葉を後ろにつけても
結局は、しかたがないって風に聞こえるから。
あきらめてるの?
サクラとアオ -11-
「裏切ったのか?」
そうだよ。
だから。
そうか、なんて言葉で
ケリをつけてしまわないでほしいんだ。
言い訳することを望んでほしいんだ。
一人ぼっちにしないで、ほしいんだ。
サクラとアオ -12-
「わかってないのか?」
わかってるさ。
わかってて。
甘えてるんだよ。
甘えてるってことも
甘えさせてもらってるってことも
全部さ、
全部、わかってるんだ。
サクラとアオ -13-
「取り分が減ったからってしょげることなんかねぇさ」
見えないから気になるんだよ。
心に取り分なんて枠、はめられやしないだろ。
あ、でも。
そうか。
相手の自分に対する
想いの深さとか占める割合とか
そういう話なら、少しは。
サクラとアオ -14-
「気はすんだかい?」
こっちの気がすめばそれでいいと思ってる
それこそ自分勝手ってものだろ。
こっちの気がすむかどうかなんて関係ない
始末をつけたいだけなんだ。
サクラとアオ -15-
「なに謝ってんだよ?」
だって。
だって。
だって、そんな顔、するから。
ごめん。
押しつけがましくて、ごめん。