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踏み台転生したらなんかバグってた  作者: どろにんぎょう
第二章 ダンジョン・ブレイキング
34/36

タイム

 

「あ、そうそう。言い忘れてたけど、決闘については無効になったから」

「!? な、なんで~!?」

「あー、まあ、ルール上色々あってな……というか、これに関しては俺が一番悪いんだけど……」


 決闘は、原則乱入禁止である。

 というのも、決闘というのは文字通り一対一で、命を懸けて行われるものであるからだ────もちろん、学生の決闘で死者が出ることなんてまず無いし、出さないために救護班が常に控えてはいるのだが。

 それでも、基本的にはどちらかが倒れるまで行われるものであり、そこに第三者が介入することは、シンプルに許されることではない。

 滅茶苦茶なルール違反である……何なら、互いの誇りを汚したと、この二人にタコ殴りにされても俺はおかしくないのであった。


 もちろん、この「蛮族が決めたのかな?」みたいなルールを俺は、知らなかった訳ではない。仮にも一年時に決闘した身である、ルールくらいは頭の中に入っていた。

 だから、全部分かっていた上で、俺は決闘に介入したのである……まあ、内申点とか評価とか、外聞が下がったところでね、あんまり気にするようなことでもないし。

 ネフィリアムに死なれたり、葛籠織が人を殺してしまったという事実を、マイナスとして重く背負ってしまうリスクと比べれば、天秤にかけるほどでも無いのであった。

 そういう訳で、決闘は無効となったのである────といっても、葛籠織は根源魔術使用中に意識を飛ばしていたし、ネフィリアムも死んでいただろうから、結果的には、引き分けに近い形になっていただろうが。


「そういう訳だから、あの賭けも無効っつーことで──ていうかね、お前ら勝手に俺を賭けるなよな……」

「参ったわね。全く反論が出来ないじゃない」

「あは~、真っ当な意見だ~」


 全然反省していない様子の二人に、思わずため息を吐く。

 まあ、元よりそこは求めていなかったのだが……ここまで全く悪びれていないと、いっそ清々しいというものであった。

 いややっぱ嘘、ちょっとは反省して欲しい。出来れば目に見える形で頼む。

 とはいえ、これはこれである意味、都合が良いと言えなくも無いのだが──何せ、俺が乱入したことについて、彼女らは全く気にしていないのだ。

 それはつまり、こちらの意見をごり押ししやすい状況である、ということでもある。


「さて、それじゃあ迷宮攻略チームについては、振り出しに戻った訳なんだけど──」

「もちろん~、日鞠と組むよね~?」

「うわっ、圧が凄いな! 言葉をかぶせてくるのはやめろ!」

「…………」

「ネフィリアムはジッと目だけで訴えかけてくるのはやめろ……怖い、普通に怖いから」


 軽く人を殺せそうな目するじゃん……。

 夢に出てきそうなので本当にやめて欲しかった。

 一旦話を聞こうか、とこれ見よがしにコホンと咳払いをする。


「まあ、色々と考えて、先生方とも話してみた結果になるんだけど、今回俺は、誰とも三人組にならないことにしたから」

「……お、怒らせちゃった~?」

「え? あぁ、いや、別にそういうのじゃない。ていうか決闘に関しては、動機や結果はともかく、内容は素晴らしいものだったの一言に尽きるからな……」


 実際、根源魔術を目の当たりすることが出来る機会は滅多に無い。というか、俺は普通に初めてだった。

 周りにぽんぽこ魔装使ったりする人がいるだけに、感覚がバグりがちであるのだが、根源魔術も魔装も、魔術の極致点だ。

 稀少という一言に纏めるには、あまりにも勿体ない気持ちになってしまうくらいの神業である。


「それじゃあ~、日鞠は、凄かった~?」

「そりゃもちろん、死ぬかと思ったけどな」

「えへへ~、やった~」


 ぽわぽわとしながらもガッツポーズする葛籠織であった。

 いや、何もやったーではないのだが……まあ、向上心があるという見方をすれば、プラスではあるのだろう。

 それに、結果としてネフィリアムの実力が十分に測れたのは大きい。

 思っていたよりずっと強かったのは、嬉しい誤算と言えるだろう。


「だからまあ、単純に、俺だけ四~七年生の……その、いわゆる助っ人枠で組むことになったんだよな」


 まあ、何というか。

 迷宮攻略という授業自体、生徒の成長を促す為のものであるのだが、俺の場合、別にもう良くない? という流れになってしまったのだった。

 俺とて迷宮には入ったことは無いのだが、まあ普通に対応できるでしょ君……という、身も蓋も無い結論に至った訳である。

 大体の障害を味方に任せず、全部自力で突破されるのも意味がないし、そもそもチーム組みでここまでの騒動に発展させた咎(これについては本当に何で俺なんだよ、とは思うが)もある────というのが建前であり、本音を言うと、アルティス魔法魔術学園の生徒としてではなく、第七秘匿機関の一員として動きたかった。これに尽きる。


 何せご存知の通り、何が起こってもおかしくはない状況である。

 何かが起こった時に、立華君と葛籠織、ネフィリアムが死んでしまっては困るのだ。だから、俺はその保険と言う訳である。

 それに、第一の破滅の戦いを全員が知ってる分、俺であればこういう特別扱いをされても、角が立たないというのもあった。

 まあ、正直なことを言ってしまうと、レア先輩や月ヶ瀬先輩と一緒に行けなくなってしまったので、俺としてはもうこの時点で、楽しみが半分奪われたようなものであるのだが……。

 仕方が無いだろう。二人とはいつでも会えるし、文句を言っている場合でもない。


「そういう訳で、葛籠織とネフィリアムと立華君。そこにプラスで俺って形になったから」

「つまり、結局は日之守くんの掌の上だった……ということかしら?」

「えぇ……いや、うん、まあ、最終的には、そういう形になっちゃったんだけど……まるで俺が黒幕みたいな言い方するのはやめようね」


 またしても誤解が生まれかねないし、もっと言うなら黒幕はお前らの方なんだよ。

 二人して気絶するし、決闘はどうするのかで若干揉め始めるし、そこから俺の話に発展するしで大変だったんだからな。

 今回に限っては普通に被害者なのであった……とは、流石に口が裂けても言えないかもしれないのだが。

 不本意ながら、俺が原因な訳だしな……。

 問題児の一人や二人くらい、俺が責任持って見ることになったのも、また仕方がないと言わざるを得ないだろう。


「あは~、すっかり日鞠も問題児扱いなんだ~」

「お前はずっと前から問題児扱いだっただろうが……!」

「いえ、待ってちょうだい? 私もその枠に入れられてるのかしら……!?」

「何でお前もビックリしてるんだよ、当たり前だろ。決闘に至るまでの流れ、もう忘れちゃったの?」


 むしろこの場合、一番不利益被ってるのは立華君とも言えるのだった。

 やっぱりこいつらのことは放っておいて、立華君と俺と、他の生徒で組めば良かったかな……とか思う。

 まあ、それはそれで、立華君が怖かったから遠慮したのだが。

 あの後、何だかやたらと二人で組むことを推してくるもんだから、思わず引いちゃったんだよな。

 いや本当、今思い返してみても、凄い熱量だったな……。

 それが迷宮にかける想いなのかどうかは、さっぱり判断がつかなかったのだが、その熱量を少しでも良いからヒロインに向けたら良いんじゃないかな……と思うばかりであった。

 俺に向けてもあんまり意味がないというものである。


「とにかく、そうなったから、よろしくってことで。どっちにも期待してるよ。それじゃ、ゆっくり休んでな」


 言いながら、包まれていた手でネフィリアムの髪を梳き。

 未だに身体を上手く動かせないらしい、葛籠織の頭をポンポンと叩く。

 何だかもう、一件落着したように見えるのだが、むしろ忙しいのはこっからである。

 色々用意しないとな、と思いつつ医務室を出た。








 去っていく少年を、呆けたように見ながら、ネフィリアムは頭に手を添えポツリと言葉を漏らす。


「……あれって、素なのよね? 狙ってる訳じゃ無いのよね……?」

「うんうん~、かんかんってそういう人なんだよ~」


 同調する葛籠織の言葉に、ネフィリアムは曖昧な笑みを浮かべ、


(普通に天然誑しじゃない……)


 と思うのだった。


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