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踏み台転生したらなんかバグってた  作者: どろにんぎょう
第二章 ダンジョン・ブレイキング
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ヒロインズ


 アルティス魔法魔術学園は決闘を許可されている……どころか、むしろ推奨すらされている学園である。

 教師勢が全員実力者であることもあり、実戦でこそ、学べるものがあるということを知っているからだろう。

 だからこそ、決闘場は各学年につき、三つずつ提供されていた。

 その内の一つで対峙する二人を、立華君と並んで特等席で眺める。


「凄いギャラリーだな……僕たちが戦った時より、多いんじゃないか?」

「まあ、二人とも有名人ではあるからな……」

「フッ、どうした? 顔色が悪いぞ?」

「これで良かったら俺、嫌なやつ過ぎるだろ……」


 あー、もう、マジで胃が痛い。

 何でこんなことになってんだ、という文句を通り越して、最早泣きながら暴れたいくらいである。

 というのも、仲間と仲間候補がバチバチなのもそうであるのだが、あの二人が俺を奪い合っている、という噂まで一気に広まってしまったからだ。

 いや、変に尾ひれがついてる訳ではないし、まあまあ事実ではあるのだが……。

 そのせいで、学年問わず野次馬が決闘場には集まりまくっているのだった。

 もうね、四方八方から好奇心による視線をぶつけられてるんだわ。

 注目されるのは苦手というか、普通に嫌いなので勘弁してほしかった。


「注目を集めるようなことばかりしておいて、面白いことを言うんだな、君は」

「いやっ、別に好きでこんなことしてる訳じゃ無いからね?」


 突然発生したイベントに、全身引きずり回されてるみたいになってんだよ。

 身も心もボロボロになるので、そろそろ俺には優しくしてほしいところだった。


「自業自得だろ……それより、ほら。日之守は、どっちが勝つと思うんだ?」

「えぇ……分からん……」

「…………」


 は? 嘗めてんのか? みたいな顔を、無言で向けて来る立華くんであった。

 何か恥ずかしくなってくるからやめて欲しい……別に、考えるのが面倒だったという訳ではない。

 本当に分からないので、分からないとしか言いようがなかったのである。

 しかし、まあ、敢えてどちらかを選ぶというのなら、やはり葛籠織だろうか。

 原作通りに進んでいるのなら、間違いなくネフィリアムであるのだが……如何せん、ここはもう、別の世界線と言っても差し支えが無い。

 その証拠という訳ではないが、葛籠織も立華くんも、通常では考えられないほどのレベルアップを遂げている。

 そういった側面を加味すれば、やはり葛籠織が若干上か……? と思わなくもない。

 ただ、葛籠織が原作通りでない以上、ネフィリアムだって、原作通りでない可能性が非常に高いのも、また事実であると言えるだろう。

 それこそ、ネフィリアムから俺に声をかけてきたように。

 何かしらの違いが、彼女を大幅にパワーアップさせている可能性は大いにあった。

 何がどう作用して、どのような変化を生むのかは全く分からない、ということは、一年生の時に心底思い知らされたからな……。

 まあ、特に何かが起こっていなくとも、ネフィリアムはクソ強いので、やはり分からないというのが本音になるだろう。


「ま、見てれば分かるだろ」

「それは、そうなんだが……まあ良いか」


 不安なら手でも握ろうか? という、立華君にしては珍しい提案を拒否するのと同時に。

 決闘の立会人である教師が杖を振るい、戦闘開始の合図を放った────瞬間。


撃ち(Spara a )殺せ(morte)


 ネフィリアムの言葉に応じて、漆黒の弾丸は撃ち放たれる。

 そう、彼女は魔法使いではない。《《魔法魔術師だ》》。

 《暗影》という、先天性魔術属性を保有する彼女は、既に相当なレベルでそれを使いこなしている。

 とはいえ、魔法で対抗できないほどではない。当然だ。

 これは射撃魔法で撃ち合いになるかな、と思えば


(Spara )抜け(attraverso)


 同じように撃ち放たれた光の矢が、それらを全て相殺した…………あ!!?!?

 え……いや、え!? つ、使ってるじゃん……。

 葛籠織、当たり前みたいな面で魔術、使ってるじゃん……!?

 有り得ないだろ、と有り得なくはない、という意見が脳内で激しくぶつかり合う。

 というのも、葛籠織が魔術を使っていること、それ自体はおかしいことではないからだ。

 葛籠織は天才中の天才である。故に、当然ながら、先天性魔術属性を保有している。

 ただ、彼女はちょっとした事情により、四年生に上がるまでは魔術が使えないはずなのだ。

 そう、はずだった(・・・・・)

 何か普通に使ってるね、アレ。何でかなあ。

 認めがたい現実にボコボコに殴り倒されてしまい、思わずため息が出る。


殺せ(Uccisione) 殺せ(Uccisione) 撃ち(Spara a )殺せ(morte)!」

早く(Di più) 速く(Di più) もっと(veloc)迅く(emente) (Spara )貫け(attraverso)!」


 威力を底上げされた影の銃弾と、矢継ぎ早に放たれる光の矢が、弾いて弾いて弾き合う。

 爆発が起こる度に、互いに一歩前に出る。

 その度に杖を振る速度が、魔術を行使する速度が加速する。


「な、何か随分と、物騒な魔術の使い方するんだな、あの人……」


 冷や汗を垂らしながら呟いた立華くんに、思わず「それな」と頷いてしまう。

 とはいえ、アレはアレでかなり効率的ではあるのだが。

 魔術を行使するにあたり、大前提として必要とされているのは「イメージ」だ。

 どれほどの魔力を扱い、どのような経緯を以て、どのような結果をもたらしたいのか。

 そういったイメージを詳細かつ、明確にしたものを、言葉に載せて実現させる。

 だから例えば、今のネフィリアムがやったように「殺せ」だけでは基本、魔術は発動しない。

 その後に「撃ち殺せ」という、明確な手段を言葉にすることで、一つの魔術に仕立て上げているのだ。

 当然、それは葛籠織の方も同様である。


弓引(Spara )くは(attra)(verso )の射手(i cieli) 汝の罪(Giudica )は今(il )許される(peccato)


 なんて?

 いや、え……なんて?

 とんでもなく抽象的な言葉と共に生成された、百を超える光の矢に思考が止まる。

 え? 知らない……。何それ、俺の知ってる魔術と違う……。

 俺がドヤ顔で魔術についての説明をした直後に、それを覆すような真似をしないで欲しかった。

 魔術はもっとこう、直截的な言葉で使うものだろうが────ああ、いや、そうでもないのか?

 飽くまで魔術とは、本人のイメージに依存するものだ。

 だから、葛籠織がアレで完璧なイメージを作れているのなら、発動してもおかしくはないってことになるだろう。理論上は。

 そういう意味不明な自由性があるところも、魔術の強みと言えなくもない。いや嘘。やっぱりおかしいよあいつ……。


「────沈め(Lavello)!」


 トプン、とまるで水に沈むように影へと消えて、ネフィリアムは光の雨を回避する。

 いや、あれ本当便利……というか、最早ズルだよな。

 影にさえ入ってしまえば、彼女はほぼ無敵だ。その上──


蹴り(Calcia )殺せ(e uccidi)!」

「──守護魔法:高速展開!」

『Magia dei guardiani:Distribuzione ad alta velocità』


 ──影であるのなら、どこからでも出てくることが出来るのだから。

 葛籠織の影から飛び出したネフィリアムの、影を纏った一撃が守護魔法を突き破り、葛籠織へと届く。


「かっ、は────」


 まともな叫び声も上げられず、葛籠織は吹き飛んだ。

 地を滑るように転がっていき、壁にぶつかることでようやく動きを止める。

 姿は見えないが、流石に倒れたってことは無いだろう。

 ただ、相当なダメージではあったはずである。


「魔術師なのに接近戦をやるなんて、クラウネス先輩みたいだな……」

「そこも込みで、影から出てきたんだろうな。葛籠織も、意識は中~遠距離に向けてたし、完全に意表を突かれた形だ」


 まあ、ネフィリアムはそもそも、中~近距離タイプの魔法魔術師ではあるのだが。

 影に潜ることで、常に距離的なアドバンテージを取れるから、そうなるのも当然と言ったところだろう。


「……改めて、聞いても良いか? どっちが勝つと思うか」

「え? うぅん……」


 もう、聞くまでも無いんじゃない? と思いながらも決闘場へと目をやれば、土煙から葛籠織が姿を現した。

 守護魔法の上から叩かれた左腕は軽くひしゃげている。動かせないどころか、何もしてない今でさえ、激痛が走っているだろう。

 俺の知る限り、葛籠織があそこまでの怪我を負うのは初めてだ。

 痛みの他に、混乱や困惑だってあるかもしれない。

 だから、まあ、ここまでだろう。

 流石にここまで見れば、決着も見えたようなものである。


「まあ、多分だけど。奇跡が起きない限りは────」




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