↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
踏み台転生したらなんかバグってた  作者: どろにんぎょう
第二章 ダンジョン・ブレイキング
26/36

リスタート


 第一の破滅を退けてから、色々なことはあったが、しかし、特段語るべきようなことも無かった。

 というのも、第二第三の破滅が続けてくるのだろう……という予想に反して、今日に至るまで、すこぶる平和だったからである。

 何なら黒帝と魔王の脅威が去ったので、原作で起こるはずだった諸々の事件まで無くなってしまい、ビビるくらい平穏な学生生活が形成されたのだった。

 無論、それが悪いということではなく、むしろ望ましいものであったのは間違いないのだが……。

 どうにも肩透かしな一年だった、という訳である。

 まあ、ゲームでもかなりテンポ良く年月経つしな。基本、一章一年構成ならではって感じだ。


「わわっ、くっ……うあっ!?」


 とはいえ、こうも平和が続くと、どうしても気が抜けてしまうのは仕方がないと言えるだろう。

 第一の破滅の件についても、かなり急なことであった上に、明確な被害がほとんど出なかったこともあり、本当に次が来るのだろうか? と思ってしまう俺がいるのも、また事実であった。

 そしてこれはきっと、俺に限った話では無いと思うし、悪いことでも無いのだと思う。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる。大体の人間は、そういうものだ。


「ちょっ、んんっ、たすっ、たすけっ!」


 もちろん、こんなことを考えているだなんて、校長やアテナ先生に知られでもしたら、ポカリと一発、気合を入れられてしまうのだろうが……。

 下手をすれば、みっちり三日三晩ほど、個人レッスンされそうなものである。

 そんなことになってしまえば、生きて帰るのは難しいだろう────全力で挑んでもあの二人に俺は、全く敵わないのだ。

 まあ、基本的に生徒が教師に勝つなんて無理にもほどがある、という話ではあるのだが。

 ちょっと高くなり始めていた鼻はもう、ボキボキに折られまくっていた。

 ついでに言えば、各寮対抗戦のメンバーも同様である。普通に五人揃って転がされた。

 そんな、その内の一人である立華くんが、


「あーっ! もう無理! 無理無理無理無理! 助けてくれーッ!」


 と、地上にいる俺たちへと叫ぶ。

 空城立華。『蒼天に咲く徒花』における主人公であり、勇者の血を引く少年。

 現在、そのアドバンテージは失われたものの、バリバリと才能を覚醒させ始めていた彼は現在、飛行魔法の個人訓練中であり、俺と葛籠織、それから月ヶ瀬先輩は、それに付き合っているのだった。

 一人を好む彼が、珍しい……と思われるかもしれないが、これは飛行魔法の訓練は必ず、飛行魔法を習得している者とするよう定められているからだ。

 一人で訓練して一人で落ちて、一人で怪我されて手遅れに……とかなられたら困る、という訳である。


「いや、まだいけるまだいける、落ちては無いから。落ち着いて」

「お、おお、落ち着けるわけないだろう!? 見ろ、さっきから全然安定していない!」

「じゃあ~安定させれば良いと思う~」

「それが! 出来たら! 苦労してないぃぃぃん……!?」


 文句を言おうとして、飛行魔法に振り回される立華くんであった。

 ふぉぉぉぉん! と勢いよく全身を回転させている。

 アレはアレでどうやっているんだよ……と聞きたいところではあるのだが、こんな動きを見られるのは今だけだろうから、取り敢えず微笑んで見守っておくことにした。

 飛行魔法は、多くの魔法使いに愛用される魔法ではあるのだが、コツを掴むまでが難しい魔法でもある。

 逆を言えば、コツさえ掴めば、すぐに使いこなせる便利な魔法だ。

 まあ、基本的に人間って、地に足つけて生きる生き物だからな。

 空中で自由自在に動く、なんてことをすぐに出来る人間はそう多くない。

 例外と言えば、


「ん~……あっ、おっけ~」


 とか言って、一発で習得した葛籠織くらいである。

 習って二分で教師に「完璧」と言わせた辺り、本当に才能の塊であることを分からされてしまった。

 もちろん、フラフラしてるとは言え、ああして空中にいるのを保っている辺り、立華くんもかなりのセンスがあるのだが。


「あはは……まだ地面にいる時の感覚抜けてないじゃないかな? 空中に不可視の足場があるんじゃなくて、文字通り浮いてるって考えようか」

「それっは、分かっているんだが……」

「いっつも教室で無になろうとしてるでしょ、あのくらい自然体になって」

「君は僕にハッ倒されたいのか!?」


 そうなんだな!? と立華くんが叫びに涙声を滲ませる。

 普通に申し訳ない気持ちにはなってくるのだが、何だかんだ言って、彼は追い込まれれば追い込まれるほど、成長する類の人間だ。

 レア先輩の魔力として使われた時でさえ、ただそれだけで大幅にレベルアップしたほどである。

 流石の主人公、と言うべきだろう。


「あは~、かんかんってば、教えるの下手くそ~」

「葛籠織にだけは言われたくはないんだけど……」

「私からしたら、どっちもどっちだよ……」


 俺の右隣に座る、月ヶ瀬先輩が呆れたような目で俺達を見る。

 対して、俺の左隣に座る葛籠織はドヤ! といった様子で俺を見ていた。何でだよ。

 どっちも高評価されてるんじゃなくて、どっちも低評価されてるって話だからね? これ……。


「へへ~、かんかんと~一緒なのが嬉しいんだよ~」

「そうやってストレートに好意を示すのやめない? 好きになっちゃうかもだろ」

「もしそうなったら~、ちゃんと振ってあげるよ~?」

「振っちゃダメだろそれは……いや、個人の自由ではあるんだが……」


 期待させといて振るのは犯罪だろ……。

 この年頃の男女と言えば、特に勘違いしやすいんだから……。

 俺が転生者じゃなかったら、既に惚れてる自信があるほどである。本当に気を付けて欲しい。


「勘違いさせると言えば、甘楽くんもな気がするけどね」

「えっ……俺ですか?」

「レアちゃんの時もそうだったけど、きみ、助けを求められたら完膚なきまでに助けちゃうから。そういうの、結構ズルだと思うよ」

「大分理不尽なこと言い始めたな……」


 というか、レア先輩の件についてだって、別に俺が何もかもやった訳ではない。

 何か……本当に謙遜抜きで、流れで解決になっただけである。

 しかも、俺が動いたのだって、多分な私情が含まれていたのだ。

 推しだから、これからの事件に関わるから、親密度の調整をしたかったから……という、ちょっと誰かに言える感じの類ではない、愚かしい考えが。

 これを優しいという一言に纏めるのは、少々以上の抵抗があった。

 

「……甘楽くんって、そういうところ面倒臭いよね」

「おっと、自分のことを棚上げするのは良くないですよ?」

「!!?」

「えっ? 自覚無しなんだ……」


 監禁したり、強制心中とかしてくる女が、面倒臭くない訳ないだろ。

 いや、あるいは自覚が無いからこそ、面倒さ極まっているのかもしれないのだが……。

 この辺をあんまり突っつくのは藪蛇になりそうだな、と思った。


「あは~、どんぐりの背比べだ~」

「それは流石に俺に失礼過ぎだろうが……!」

「甘楽くんが今一番失礼なこと言ってるからね!?」


 ビックリしたように言う月ヶ瀬先輩だった。

 もうっ、と怒ったように何度も肩で小突いてくる。

 普通に可愛いからやめてくれないかな、というのと、普通に痛いからやめてくれないかな、という気持ちでいっぱいになってしまった。

 髪が長いからふわふわ舞って、良い匂いがするんだよな。

 こればっかりは流石に慣れない、と思って気を紛らわす為に空を見上げれば、


「あっ」


 思わず、声が出た。

 絶賛回転中だったところを、気合で止めている立華くんと目が合ったからである。

 というか、物凄い形相で睨まれていた。

 え? 何あの顔、こわ……。

 やっぱり葛籠織と月ヶ瀬先輩の間とかいう、なめてんのかお前、みたいなポジションに座ることになったのが良くなかったかな、と思う。

 傍から見たらただのハーレム野郎である。普通にキレられてもおかしくはない。

 適当な理由でもつけて席を外した方が良いかもしれない……なんて思えば、立華くんは落ちてきた。

 落ちてきた……!?


「うわぁぁぁぁぁあああああああああん!!? たすっ、たすけぇぇぇえええ!」

「助けを求めながら加速するのはやめろーッ!」


 ていうか、明らかに自ら急降下の姿勢に入ってたよね? 暴力による排除(切り札)を切るのが早すぎるだろ。

 そう思いながらも、飛行魔法を展開して地を叩く────これ、普通に受け止めても怪我しそうな速度に達してるな……。

 瞬きをするごとに速度を上げる立華くんだった。マジで殺す気? ってスピードである。

 とはいえ、流石に箒の速度に追いつくことは無いのだが。箒はある意味では、杖すら凌ぐ大発明だ。

 人ひとりで加速できる速度は限界がある。それも、素人ともなれば問題にする程でもない。

 俺は急速降下してきた立華くんを抱き留めた。


「ぐおっ……!? 衝撃すご……」

「お、おい! 不安になるようなこと言うのはやめてくれないか!?」


 冷静に考えれば俺も、飛行魔法に関しては別に熟練者って訳じゃ無かった。

 ほぼ突撃みたいな形で抱き留めてしまい、一瞬息が止まりそうになったが、上手く立て直して勢いを殺す。

 そのまま空中で二、三回ほど回りながら速度を落とし、ゆっくりと地上に降り立った。


「し、死ぬかと思った……!」

「お前を殺してやる、みたいな顔で落ちてきたやつとは思えない台詞だ……」

「はぁ!? べっ、別に僕は、嫉妬した訳じゃ無いんだが!?」

「自白しちゃったねぇ……」


 ここまで素直に本音を吐き出されると、これはこれで好感が上がってしまうな、と思った。

 俺の思っていた主人公像とはまあまあ違うのだが、悪くはない。

 とはいえ、如何にもツンデレです、みたいな男なのはちょっと斬新だよな……とか考えていれば、


「あらあら、皆様方、揃っていましたのね?」


 飛行魔法の訓練中でしたかしら? と、満面の笑みで現れながら、レア先輩はそう言った。

 それから、改まったように口を開く。


「《《緊急招集》》ですわ────日之守様。アテナ先生が、貴方様にだけ、話したいことがあるそうです」








ご神託チャット▼

◇名無しの神様 いけーーーーーーッ! 押し倒せボケナスーーーーッ!

◇名無しの神様 もっとちゃんと抱きつけ! お前ならやれるはずだ!

◇名無しの神様 すっかり立華くんちゃんの呼び名がボケナスになってるの面白すぎだな

◇名無しの神様 バッカお前そういうことはTSしてからやれっつっただろ!

◇名無しの神様 もうTSはしてんだよなあ

◇名無しの神様 TS×TSでもとに戻るとか一見するとただの馬鹿でおもろい

◇名無しの神様 言うて本気でやるならTS薬必須だよな?

◇名無しの神様 そりゃね

◇名無しの神様 ただ製造方法も特殊だし材料も稀少だからな……

◇名無しの神様 今はしゃーなしだろ

◇名無しの神様 まあでも、ついに始まったな第二章

◇名無しの神様 第二章……第二章……?

◇名無しの神様 ワイらの知ってる二章と全然違いますが……

◇名無しの神様 普通なら魔王の存在とか片鱗程度しか出てないはずですが……

◇名無しの神様 ……まあ、二年生編ってことで!

◇名無しの神様 せやね、切り替えてこーぜ

◇名無しの神様 にしても本当に、魔王の件から特に事件は起きなかったな

◇名無しの神様 それなあ

◇名無しの神様 大災害が終わったあとみたいな静けさだったよな

◇名無しの神様 文字通りそうなんだよなあ

◇名無しの神様 大災害(ひのもり)なので……

◇名無しの神様 つってもこれ、結局どうなっていくんだろうな

◇名無しの神様 まあ……流石に学園のイベントは変わらない訳だし、ある程度はそれに沿うとは思うんだけどな

◇名無しの神様 一年生の時も一応、各寮対抗戦っていうイベントの上で起きたことではあるしな

◇イカした神様 頼む……これ以上は平穏に進んでくれ……

◇名無しの神様 いや草

◇名無しの神様 本気の懇願じゃん

◇名無しの神様 もう手遅れに決まってんだろ馬鹿が

◇イカした神様 えーんえんえんえんえん

◇名無しの神様 喧しすぎて草

◇名無しの神様 自業自得なんだワ

◇名無しの神様 そんなことよりもっと日之守さんの顔写してくれんか?

◇名無しの神様 日之守のファン出来てて草。


【はてさて】蒼天に咲く徒花 バグキャラ日之守甘楽 攻略RTA【次はどう壊れる】





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。