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踏み台転生したらなんかバグってた  作者: どろにんぎょう
第一章 バグった世界で何をする
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至りし者


「あっ、もしかしてこれ、ヤバい感じ?」


 上空で一人、「まあ、何だかんだ少年ならいけるっしょ」と余裕をぶちかましていたアテナ(ノエル)は、砲撃に呑み込まれた甘楽を見て、初めて危機感を覚えた。

 辛うじて守護魔法は破られていないが、会場自体には大穴が空いており────そこから、彼が這い上がって来る様子は見られない。

 ……。

 …………。

 ………………。


(や、やばいやばいやばいやばいやばい! 少年、死んじゃった!? やだやだやだやだやだやだダメダメダメダメ!!! うわぁぁぁああん死んじゃやだ~~!)


 滝のように汗を流し始め、泣きそうになりながらアテナ(ノエル)は空を踏みしめる。

 くそぅ、許さない。絶対に殺してやるぞ魔王! と、半分くらい責任を擦り付け────しかし、飛び出さなかった。

 何故ならば。

 一条の蒼い閃光が、魔王を穿ったからである。


「ゔっ、おぇ……ぐ、ま、マジで、死んだと思った……」

「────有り得ぬ。何故生き残れた、特異点」

「いや、生き残ったって言うか、死んでないだけ、みたいなもん、なんだけどな……」


 土煙から現れた甘楽は、生きているのが不思議なほどに満身創痍だった。

 全身が、自身の血に塗れている。

 歩くのは覚束なく、左腕はひしゃげてだらしなく揺れている────それでも、魔王には不可解だった。

 当然だ、多少の拮抗はしたものの、直撃したのである。

 一片すら残さず、消し飛んでいて当然だ。それなのに、何故?

 思考・分析を開始して数秒。

 魔王は解答を得る。


「守護の魔法を、壊れたそばから展開し続けたか」

「えぇ……分かる、んだ。まあ、魔法は基本的に、高速かつ、大量の展開が売り、だからな」

「理解した────であれば、次こそ消えるが良い、特異点」


 慈悲は無く。ゆえに躊躇は無く。

 魔王は再び、先程と全く同じ魔法陣を展開した。

 それを見て、心の底から安堵していたアテナ(ノエル)が、「今度こそやばい!」と、魔装を振るおうとするのと。


「久遠の彼方 祓われざる闇の先 沈まざる光の雫」


 右手を前に出し、甘楽が詠唱を口ずさむのは、同時のことであった。

 思わずアテナ(ノエル)は動きを止めて、絶句した。

 そんな彼女とは逆に、魔王は少しの逡巡も無く、口を開く。


「王核限定解除────之なるは、始まりにして終わりの破滅」

「理を壊す道 堕ちた天(そら)は何を見ゆ」


 それは、アテナ(ノエル)からしてみても、有り得ない光景だった。

 今、甘楽が行使しているのは《《魔法ではない》》、《《魔術だ》》。

 いや、いいや。

 先天性魔術属性を必要としていないアレは、最早魔術と言って良いのかすら分からない。

 未来(アテナ)の記憶にさえ無いそれを、すぐに理解することは出来なかった。

 しかし、ただ一つ、分かるとするならば。

 彼は今、魔法と魔術、二つの方程式を解析し、独自の形に落とし込んでいるということだけだ。


「此処に滅亡を。愚かなる星に鉄槌を。乱れた世に制裁を」

「恐れること勿れ 讃えること勿れ」


 膨張する魔力は、先程とは違い完全なる拮抗を生み出した。

 ナタリアとアテナ(ノエル)の張った守護魔法が、その余波だけで震えている。


「────秩序は此処に、砕け落ちた」

「導(しるべ)に従い ただ弓を引け」


 二つの詠唱が、同時に終わりを迎える。

 しかし、起動するのは魔王の方が早かった。

 純粋な闇の破滅が、先んじて解き放たれる。


「王核限界駆動────"|訪れよ、第一の滅亡《Prima Distruzione》"」


 それは魔王本来の持つ切り札と、世界の自滅機構が備えていた仕組みが合わさった、第一の終焉。

 容易に星を喰らい尽くし、常識を粉々に打ち砕く、終わりへと向かう一撃。

 それが、今たった一人の少年にのみ向けられて、放たれた。


「展開────"第壱砲撃魔導:無窮"』


 対し、迎え撃ったのは蒼色の希望だった。

 すべてを呑み込まんとする闇を、逆に喰らい尽くす光の権化。

 アテナ(ノエル)の理解は、半分正解で、半分不正解だった。

 現在、甘楽の行使しているモノは、超科学(魔法)でも無ければ、幻想(魔術)でも無い。

 その二つが融合せしめた境地。あるいは、七つの滅亡のみが行使できる、世界を壊す秘奥────魔導。

 何もかもが限界以上にまで到達した甘楽は今、本来人の身では辿りけない……辿り着いてはいけない領域に、ほとんど意識を失った状態で、指先だけ触れていた。


 不完全な身で放たれた魔導と、不完全な理解で放たれた魔導。

 どちらが勝ってもおかしくはなかった。

 それほどまでに、互いの出力は拮抗しており────しかし。

 

「し、信じ、られぬ……有り得ない! 余は、余こそは! 第一の滅亡にして、魔王であるぞ!」


 勝利の女神は、少年に微笑んだ。

 勢いを増し続ける蒼色が、ついに闇を呑み込み、魔王を射抜く。

 外装を剥がされ、弱体化した肉体を、一条の光芒が貫き天へと至る。

 ────魔王は、この世界において特別な存在だ。

 選ばれし者による攻撃でしか、命を落とすことは無い。それはこの状況においても変わることは無く、しかし、魔王と一体化した、世(・)界(・)の(・)自(・)滅(・)機(・)構(・)の(・)方(・)は(・)別(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 音がする、壊れる音がする。

 死と再生を繰り返す度に剥がれ落ちていく不純物が、純然たる力を前に、完全に消し飛んだ。

 逃げる力さえも失った魔王は、その場に崩れ落ちた。

 同時に、気が抜けたのか、甘楽もその場に崩れ落ちる。

 それを見て、


「え……えっ? 凄いを通り越して、ちょっと気持ち悪いな……」


 アテナ(ノエル)は、自分を差し置いて普通にドン引きした。

 

 






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