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第五話。後編 last-14

 それからは無言のまま、岩永の指示で車を走らせ、埠頭に面した古びた倉庫にたどり着いた。


「まだ、こんな場所が残ってだんだな」


 車をおり、そう独り言を呟いた。後続の車は、薬師寺が乗り込んでいる1台のみ。後は周辺の警戒に回していた。

 一連の事件は単独犯では絶対に成し得ない。彼女、おそらくはレディLその人であろう岩永浩子の信奉者がまだ複数、潜伏している可能性がある以上、周辺の警戒を怠るわけにはいかない。


「ここに一体、何があるんだ?」


「焦るなよ、すぐわかるさ。お前たちが知りたがっていた全てがここにある」


 表面上すっかり元の冷静さを取り戻していたように見えるが、私にはこう見えた。ある意味ようやくにして学生時代の岩永、作家志望の【草薙啓一】に再会したようだと。

 こいつはあの頃、何時もどこか冷めた目で他人を、世間を見下していた。その雰囲気が今再び岩永に纏わり付き、2人の時間は学生の頃に戻っていた。


「全てが、ここに?」


「まあな。母さんの研究と成果、その全てをここに収めてある。ついて来いよ、和泉」


 声まですっかり学生の頃に戻ってしまったような、そんな錯覚も覚えた。


「ああ、そこの奴ら、お前らはついてくるなよ。ここから先は俺達二人だけだ」


 後ろ振り返らず彼はそう言った。一瞬ざわついたが、俺が薬師寺とその他2人の警官を制し、この場に止めおいた。

 再会してから初めて聞く、【俺】と言う口調。岩永の本性が表れている。

 そこから先は終始無言のまま、外観はすっかり朽ち果て、後は取り壊しを待つかのような倉庫に入り、そこから地下へと降りていく。ほどなくして、扉に行き当たる。これはご丁寧に指紋認証、および網膜認証までついた最新のセキュリティーによって閉ざされていた。


「……ここには基本、俺と母さんしか入れない。そこのブロックを取ってくれ。これで一応、扉を押さえておきさえすれば、あとは誰でも入れるだろう」


 そう言って、今などは細い通路の端に無造作に置かれていたブロックを指差した。俺は指示に従いブロックを移動。ドアを開け放たれた状態で固定し、自動で閉まらないようにした。

 中には巨大なコンピューターが備え付けられており、その他一見、何が何やらよくわからない機械類が並び唯一、俺でも俺でも扱えそうなのは、広い事務机に置かれたデスクトップPC位のものか。結構年代物にも見えるが……


「母さんは、コンピューターには疎くてね。昔使っていたPCをずっと使っている。それで克明に【被験者】の観察レポートを書くんだよ。ガチャガチャと小気味よい音を立てて」

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