幕間の四 D-11
カツ丼屋は岩永の皮肉ではあっただろう。
「ああ、そこもいいがもうちょっと高い店行かないか?良い店を知っている。だが食後のコーヒーだけはまずいってことで有名なんだかな」
それは警視庁ビルにある食堂のコーヒー。見晴らしだけは絶景な、ちょっと「高い場所」にある、名(迷?)店である。
ことさらそういう皮肉を俺が言ったのは、あまりにも下手な「カツ丼」と言う隠喩を使ってきた岩永に対する、俺の中の負けず嫌いな対抗心の表れであった。
…………………………
どう思考しても、あいつが事件に絡んでいる事は間違いないんだ。そして、あいつの母親も。亡くなってしまった以上、今のところ岩永だけが事件の真相に最も近い場所にいる。
以前の特捜部が置かれていた場所、俺の参事官室。広さだけは充分すぎるほどあるデスクに腰を乗せ、思案の堂々巡り。いっそのことあいつの髪の毛でも引き抜いて……。
そんな益体ない思考に囚われていた俺の思考に、ノイズが飛び込む。備え付けの固定電話が、前時代的な呼び出し音で私の応答要求してきた。
電話の向こうの声の主は拘置所の刑務官らしい。その彼が言うには、
「今日、刑が執行される予定の死刑囚があなたに伝言をと……」
それは殺人鬼A。彼からの最後のメッセージだった。
幕間の四、了。
幕間の四、これにて了。
次回より第五話。最終回の前編、になります。
さて、実はこの最終話、本家エブリスタではエピローグ込みで、全3回【一挙公開】したんですよねえ〜。
それもまあ、ほぼほぼひと月前に。今では少し、懐かしい(笑)
ようやく、追いつきます。




