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幕間の四 D-6

 頭の固い、派閥争いにしか興味のないお歴々に一笑にふされたが、その時はまだ正式な部下ではなかった薬師寺巡査と草薙警部の尽力により、幾つかの爆弾テロ計画、要人に対する狙撃、暗殺事件を何とか未遂で抑え、最終的には軍事クーデターを画策していた、元自衛隊将校とその一味の存在を突き止め、逮捕拘禁に繋がった。

 一応、その【計画】にあった、最重要事件だけは未然に防げたので、一連の事件はそれぞれ【個々の案件】だったことにされ、捜査本部は解散。


 そのかわり、重要な役割を果たした我々が【特捜部】の中核とされ、極秘捜査に専従することとなったのだが、追加の人員が回されてくることはなく、正式に薬師寺が俺の下に来ただけ。

 ……本人がずいぶん渋っていた事は、はっきり覚えている。


 そこから一年余り。特に目立った進展はなく、図らずも捜査規模を縮小した上層部の判断が事実上、正しかったと証明されてしまった。

 その事を苦々しく思いながら、日々ネットの闇にダイブしつつ、その他無関係の事件の幾つかを何となく【解決】に導いたりと、特捜としては無為な時間を過ごしていた時、俺に再びICPOへの半年間、ないし一年にわたる出向の辞令がおり事実上、極秘特捜部は解散となる。


 その時の、薬師寺は踊りださんばかりの喜びようには若干、苛立ちを覚えたがそれ以上に、草薙警部の依願退職には驚かされた。


「流石にもう、身体がついていかんよ。すまんな和泉」


 奇しくも俺の出発とナギさんの退官が重なり、見送りに来てくれた。言いたいことは山ほどあったが、その全てを飲み込み、


「お疲れ様でした、ナギさん」


 と、言葉にしたのはそれだけで、右手を差し出した。


「お前も達者でな。頭はいいが要領が悪いとこがあるからなぁ」


 言葉遣いは既に上司と部下のものではなく、かつての先輩・後輩へと戻っていたが不快感は感じない。これが自然な関係だと頭では無く、心で理解していた。


「ははっ!それはナギさんも同じでしょう。お体を大事に」


 それが俺とナギさんその最後の会話となった。

 再びICPOに着任して僅か三ヶ月後、薬師寺からの国際電話が俺に凶報を告げた。


【元警察官逮捕。連続猟奇殺人事件の容疑者として】


 あり得ないと思った。そんなはずは無い、俺がよく知っているナギさんなら。そんな益体もない思考がぐるぐると駆け巡る。が、集まる情報が全て、【彼の犯行】を裏付けるものばかり。


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