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第四話。4-12

 世間一般では、恐らく和泉のほうこそ優れていると見るだろう。目に見える地位、成果がそれを裏付ける。私の方はそれこそ、大ベストセラーでも世に送り出さない限り、彼を超えることはないだろう。あくまでも、一般的には。


「……おい、そろそろ時間だ」


 年長の看守が接見時間の終わりを告げる。特に、私とAとの会話を聞いて、【何か】を感じ取った様子は見られなかった。


「分かりました。じゃあ今日はここまでと言うことで……」


「次回が、あるといいな。もっとも……」


 そこから先の言葉を、彼は発することができなかった。若い看守が遮り、部屋から連れ出して行ったからだ。

 恐らくはこう言いたかったはずだ、判決が出るまでにまた会えるかどうか、などではなく【私があの刑事に捕まらなければ】と。

 さて、和泉は実際どう考え、どう行動するのか。何処まで【真相】に近づいているのか、私に知る術はなかったが、それはまた向こうにしても同様であろう。


 私こと岩永浩一、又の名を【クサナギケイイチ】その真実を、彼は何処まで知っていると言うのか。私自身、全て知っているわけではないのだ。

 私は何処から来て、何処へと至るのかを。


 第四話、了。



 …………………………



 「……おい、差し入れだぞ。焼きそばにたこ焼きか、いいご身分だな。全く」


 差し出されたものに対して、男は特に反応しなかった。


 ゆったりと動き出し、食事が出されるわずかな隙間から出された二つの容器を、無感動に手に取る。


「……違う、な」


「ん、なんか言ったか?」


 男はその声に何の応答もせず、床に座り食べ始める。


「……中身は本物、か」


 そう独り言を呟くと以後、男は黙々と食事する。やがて透明なプラスチックは殻になり、残ったものは二つ折りにされ、下敷きに利用されたソースまみれの薄い紙と、使い捨てのフォーク。ご丁寧にも凶器にならないよう、紙製。


「……なるほどな」


 男はその紙に薄ら文字が書かれていたのに気がついた。


【君の父を知っている】


 そう読める文字は少し滲んでいた。筆跡にも見覚えがある。


 男は立ち上がり、容器を持って洗面台の前に立つ。蛇口を捻り、流れ出した水で容器に付着しているソースを洗い流した後、軽く振って水気を取る。


「おや?感心だな。プラスチックの容器を水洗いするなんて……」


「ゴミの分別は当然だろ?僕は環境には優しい男なんだ」


 そうして、紙とプラスチックに分けられたゴミを看守は回収した。ソースが洗い流され、元の白さを幾分取り戻した紙には、もはや肉眼で判別できる文字は無かった。

第4話、終了にてあとがき。


ここまで来て、とりあえず悪い奴が誰なのかはバラしましたけど、ついて来れてますかね?


それぞれの章、幕間の物語には本編に描いていない枝分かれしたエピソードが付属しているんですが、大体文庫本1本程度に収まるよう思考をした結果ざっくり飛ばして書いているので、ミステリー・推理小説的要素は一切省略。


【おい、そこ飛ばすのか or バラすのか】


と不満を持ちの方はいらっしゃいますでしょうかと、割と気になるところでしたが、まぁ感想の1つ批判1つもつかないのでこの作品、まだまだそこまでを至ってないということでしょうねえ。


もう少し大胆に言葉を気取ってもよかったかもしれない。丁寧に描写しすぎたかなと思いつつ、これが1番描きやすかったんだからこれが私の文体、作風なんだろうなと。


次、第4回幕間を経て、ついに最終回へと至ります。

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