第四話。4-8
「……何か言いたげに見えるが、まあいい。本題に入るか。ここ最近、なんだか忙しかったからな、俺も」
理由は、わかるだろ?そう言ってAは、両手を組み太ももの上に両膝をついた。上体を屈むようにして手の上に顎を乗せ、私を見据える。前回同様、自ら腰掛けている椅子以外は何もない、私とAを隔てる鉄格子があるだけだ。
「警察に、と言うかあのイズミ、とかって刑事に渡したんだな?アレを」
「そう言う、条件だったからな。新しい発見があれば真っ先に報告する。隠し立てする事は許されない。部外者に漏らす事も厳禁。まあ、監視があり会話を聞かれている以上、隠せるはずもないんだが」
「ふん、それもそうか。じゃ殆どあんた自身は見てないんだろ?」
そりゃ残念だったなぁ〜と、Aは唇をやや歪めニヤニヤ笑っていた。
「……そうだな。君の刑が執行され数年、或いは十数年後に後日談を書ける時が来たら、その時はゆっくり見させてもらうさ。所詮は模倣の寄せ集めだろうがね」
例のメモリカードに記録されていた内容について、Aの犯行であると言う確証は得られず、内容の真偽を確認できる新たな情報も得られず、Aの未発覚事件に関しての新証拠として提出するところまではいかなかった。
そればかりではなく捜査の途中、とある動画が配信サイトにアップされ、その内容の一部が、メモリーカードのスナッフ・ムービーの一つと完全に一致した。それは海外のスプラッター映画マニアが撮影した、自主制作映画。つまりは偽物であると言う確認が取れた。
残りの映像について。発覚しているAの事件と類似点が見られるものを除いて、他にも幾つかあったようだが、不明な点も多く本物であると言う確証は得られなかった、らしい。
他のテキストについて、詳しいことは聞かされていないが、そこにAと関係ありそうは記述はなく、実際起こっているその他未解決事件との関連性や、新事実が発見される事は無かったようだった。
「聞かされている情報の範囲内で考えると、なぜ君があのメモリーカードを隠していたのか。正直分からないんだが……」
「……ってかあんたさあ、エロ本とかエロビデオ。隠した事、ないの?」
特に意味はないよ。そう言って笑っていたが、私を見るAは何やら、物珍しい珍獣でも見つけたかのようだった。
「すまない、私にはそう言う経験、無かったな。孤児院を転々としていたのでね」




