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第四話。4-5

 母さんはボクを助ける為に人殺しをしてしまった、ボクのせいで。


「確かに、そう言えなくもないわね」


 その言葉に俯いていたボクは顔を上げた。母さんをボクを見て笑っている。


「でも面白いのよ、人間って。自分が他人を、ちっちゃな子供達を犯し陵辱するのは嬉々として勤しむのに、いざ自分がヤラれる番になると、惨めったらしく泣いて命乞いをするのよ? ちょっと先っちょ、切り落としたくらいで失神するし」


 ……違った。母さんは自分が愉しむ為の殺したんだ。ボクを助ける為に、という感情があったのか、それすら怪しい。

 もし持っていたとしても、これは大事に可愛がっていたおもちゃか何かが盗まれ、いいように弄ばれるのを阻止しようとしただけなんだって、ボクは理解した。

 これが、理性で考えるということなのだろうか? ああ、ダメだこの人。ボクは多分、母さんには一生敵わないな、そう思い知らされた瞬間だった。


「いい?人の物を盗んではいけません。これって当たり前のことよね?」


 うん、そうだと思う。でも母さんは単純にそんな事を信じてるはずなかった。次にくる言葉は決まっている。


「何故?どうして?そう思うの?」


 目を子供のようにキラキラ輝かせて言うんだ、母さんはそうやって何時も。意地悪だと思う。答えられるわけがない事を、さも楽しそうに聞いてくるのだ。


「自分で考えなさい」


 逆にボクが尋ねても、そう一言ではぐらかす大人もいる。母さんも確かに同じ事を言った。けれど、その後が他の人たちとは違っている。


「正しい事・間違っている事。法に従うことと逆らうこと。どちらも密接な関係にあるけれど、捉え方によっては幾らでも変質してしまう物なの」


 人の物を盗んではいけない。それは法によって決められ、それを犯せば罰せられる。殺人も同じ。


「でもそれって、誰が決めたのかしら?」


 それは昔の偉い人がそう決めた。悪いことだと、しちゃいけないことだと。


「そして、それは何の為に、誰の為に。ここから先の答えは、貴方自身が疑問に思い、理性で考え抜いて決めなきゃいけない事。でも、まだあなたは幼い。だから私はあなたに聞かせる。見せてもあげる。これから色々な事をあなたは見て、聞いて体験して、自分自身の答えを見つけるのよ」


 それが母として、一人の人間としてあなたにしてあげられる事だから。

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