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第四話。4-4

「いいわぁ〜いいわよその瞳、疑問と疑念に困惑しながら、それでも前を見つめる鋭い光。ああ〜でもダメよ、その目を私に向けちゃ。……壊したくなるじゃない?」


 少しだけ、母さんは閉じた口から舌を出し、ボクを見つめて言うのだった。ああ何かの本で読んだことがある、ボクは蛇に睨まれたカエル。捕食者の前の憐れな獲物に過ぎないんだ。今日、母さんが仕留めたあの鹿みたいに……。


「……あ、ああ、母、さん……」


 ボクはあの時の衝動、感触を思い出し下半身が震えるのを感じた。が、この時は耐えた。そして、瞳から力を抜き母さんを睨み据えるのをやめた。


「……そう。そうよ、それでいいの。光過ぎるもの、目立ち過ぎるものは格好の獲物なのよ、そうあの日みたいに」


 あの日、とはなんだろう。ボクはその時覚えてはいなかった。が、母さんはそう疑問を持つボクに答えてくれた。


「うん、疑問を持つのはいいことよ。そして私はそれに応える義務がある。なんと言っても私はお母さんなんだから」


  今日までいろんな事があったけど、今はあなたのことを話しましょう。そう母さんが言う。


「あなたはあの日、攫われたのよ? 変質者のあの豚に」


 あの豚、と言うのがなんなのか、わからなかったけど確かに思い出した。ボクはあの日、ちょっと肥った感じの男の人に声をかけられ、道を尋ねられたような……


「ふ〜ん、そう言うシチュエーションだったのね。まあそれはどうでもいいのだけれど」

 

 話は続く。でその男というのが小さな男の子や女の子を見つけては、路地裏や物陰に引き込んで悪戯をする、そんな奴だったんだという。最初は悪戯程度ですぐにに逃げていたようだけれど……

 けれど男の人はその時、限界を超えてしまっていた。


「あなたが攫われていた場所にね、既に先客がいたわ。可愛い男の子だった。バラバラになってて、よくわからなかったけど」


 母さんはまるで、壊れた人形を見つけたかのように言ってのけた。その辺り、ボクはよく覚えていない。気がついた時、ボクは着ていた服は全て脱がされ、床に寝かされていた。


「……気がついたようね」


 その時、横から母さんの声が聞こえ、ゆっくりと僕はそちらを向く。

 すると母さんがしゃがみ込んでいて、何やらゴソゴソと作業していた。今思うとそれは、仕留めた鹿の血抜き作業に似ていた。


「……あの日。母さんは、もしかしてボクを助ける為に人を、男の人を殺したの?」

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