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第四話。4-2

 それらは直接、母さんの手ずから教わることもあれば、ちょっと厳つい職人さんに教わることもあった。小さいうちに、色々な事を経験させてやりたいんだと、そうお寿司屋さんのちょっと怖いお爺さんに、笑いながら話していたのをよく覚えている。

 その後すぐ、死んでしまったんだけど……。


「狩りに行くわよ」


 唐突にそう言われた日のことを、ボクはよく覚えている。10歳の誕生日を目前に控えた日のことだった。その頃、ボクは孤児院にいたんだけれど、そこから10日間ほど外泊届けを出して、ボクは初めての狩り、初めての外国へと向かった。


 初めて手にしたライフルは思っていた以上に重く、その長さはボクの背丈と大した差はなかった。

 その時は生きている標的に向かって撃たせてはもらえず、射撃場での試射を何回かさせてもらっただけ。初めて、的に当たったのは何発目だったか。よくは覚えてない。音と反動、硝煙の匂いに興奮してたんだと思う。

 翌日、実際の狩りには連れて行ってもらえた。


 母さんは慣れたもので、狩猟場である森をスイスイと進む。ボクはそれについてくので精一杯。


 そしてまたボクは一つの命の終焉、その形を知る。

 それは大きな鹿だった。母さんが見つけ、仕留めたその日最初の獲物。同行していた人達が慣れた手つきで処理を始める。

 鹿にナイフを突き立てる。血を抜くのよと母さんが言い、ボクは脳裏にあの日の光景を思い出して少し、身体が震えた。


 その日は三頭ほどの鹿が獲れたけど、母さんが最初に仕留めた鹿が一番大きかった。

 本来なら、仕留めた獲物はその土地の所有者のものらしいんだけど、同行していた外国のおじさんがそうだったらしくその日、仕留めた鹿の肉を使った料理を振舞ってくれた。

 正直言って、あまり美味しくはなかった。


「命を頂く、その事に感謝しなさいと、私は思わないし言わないわ」


 ボクが鹿肉を美味しくないと言ったら母さんはそう答えた。

 そしてこうも言っていた、なぜ他の命を奪うのか?それは単に、自分にはそれができる、それを証明して悦に入っている。結局は欲望を満たすため、快楽を得る為なのよと。

 一字一句、この時の言葉を覚えていたわけじゃないけれど、別に無理に覚える必要もなかった。

 

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