幕間の三 C-5
「本当に、おやめになるつもりなんですか、潤一郎。幾ら何でもそこまでする必要は……」
「別に俺は刑事と言う職業に対しては、こだわりも愛着もないよ。ただまあ、権力に憧れなんてものはあったかな、俺は」
「……でしょうね。本当に貴方にどういう教育を施したのか、お義父さんお義母さんに小一時間、文句を言いたいくらいですが、まあそれはそれとして……」
「両親に長々、惚気話を聞かせくれるなよ?流石の俺も恥ずかしい」
「はぁ?ぶん殴りますよ?まあ、今は運転中なんでしませんけど」
「ああ、そうしてくれ。が、まあ何にせよ俺は親友。少なくともそう思っている友人を処刑台送りにしておいて、しれっと正義の男を気取って刑事を続けられるほど、図太い神経はしてないよ」
「例の、俺はパラディンじゃない。精々ホワイト・ナイトだって奴ですか。確かに胡散臭さは100倍増しですね」
「ふん、まあ惚れた弱みの憎まれ口、褒め言葉と受け取っておくよ」
「弱みを握らせてるつもり、ないんですけどね」
「ひょっとしたら、あいつはそうなる事を望んで一連の事件の絵図を描いている、なんて思ったりはしたがな。そうそう思惑通りに動いてたまるかよ。あいつは親友でもあるが一面的には、ライバルと言っていい」
「……ひょっとして岩永さん、気がついているんでしょうか?我々が……」
「公私に渡るパートナーだってことをか?だったらさっき、おめでとうを言われたよ。全く……」
「いや、そっちじゃなくて……って言うか、やっぱり気づかれてましたか、あちゃ〜」
「何顔を赤くしてんだよ、今更。まあアイツはこう言うことを人に言いふらすそうな奴じゃなし、たとえ公然の秘密としても自分から進んで藪を突くようなヘマは、まあ滅多にしないよ」
「だからぁ〜そう言うことじゃなくってですねぇ」
「当然、気がついているさ。俺がアイツを第一級の容疑者だと疑ってることは、とっくにな。その上で自分を捕まえてみろと、そういう奴なんだよ」
「やっぱり、やばい奴なんですね、岩永さん……いいえ【草薙啓一】は」




