第三話。3-14
「五月蝿い、冗談でもそんな事口にするな。誰がこんな奴と……」
「そうですよ〜岩永さん。変な誤解しないでくださいよね。幾ら将来有望なキャリア官僚のひとり。お金持ちで、おまけに顔もいいからって……あれ?警視ってば案外優良物件?」
それらを全て台無しにして余りある性格の悪さはあるけれど、などと暴走気味に一人口走り始めてしまった。
……案外お似合いじゃないか、とは流石に口にはしなかった。
その後の話しは特に有益なものとはなり得なかったと、私は感じた。薬師寺が言っていたように、手持ちの資料からより取れることなど、たかが知れていたからだ。
が、これが全て模倣だとして誰がどの様な意図を持って、この様なものを作ったのか。彼らを突き動かしたものが何だったのか、それこそがある種のオリジナル、動機となり得るものだったのか。
「俺はAがネームドの一人。【マッドピエロ】だと考えている。或いは、その模倣犯」
「そうだろうな。私も、そう睨んでいる」
そう口にはしたが同意したのは前者ではなく、後者の方である。Aには明らかに信奉の対象、模倣に足る存在がある。
「が、その対象がマッドピエロなのかビッグボスなのか、までは分からないが……」
私は自身の考えをそのまま口にした。マッドピエロ、血塗れの道化師とでも言おうか、それは文字通りの殺人鬼、恐怖を煽る存在である。そう言う異常者、異常犯罪の多発化、一般認識化させる事で先のボマーやスナイパーの役割である、社会不安の増幅といった状況を生み出す存在として、私は定義、キャラ付けをしたのだから。
「残りはパラディンとオラクル、か……」
私が設定した七人のネームド。パラディン、ゲーム・ファンタジー的には聖騎士。イメージとしてはチェスの駒であるナイト。キングと対峙し、クイーンを守る騎士。つまり【法】権力の側にある力の象徴。
オラクルは、そのまま預言者と言う意味を持ち、国家権力とはまた違った法、ある種の宗教的シンボルとしての位置付けを与えた。
「パラディン、は確か俺だったな。まあ、小説の中での話ではあるが……」
「小説の話をするならパラディンの位置付けは、ある意味で普通の悪よりタチが悪いんだが、その自覚が芽生えたのか?和泉」
そう、自らの正義を絶対とするが故に、悪をも利用することを厭わない正義の男パラディン。そのイメージに、和泉はうってつけだった。




