表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/111

第三話。3-11

 手にとってざっと目を通した後、和泉は実に興味なさげに言った。


「気になるか?岩永、この内容に」


「……少しな。何処がどうと言われると中々に難しいが、強いて言うなら所謂、ストーキングか。しかも異常なほどの執着を感じるんだ、私にはね」


 私は改めてそのコピーを手に取り、じっくりと眺める。一見すると文体は淡々として、見解も客観に徹してはいてもそこに書き込まれた内容以上の、何か強迫観念にも似た強い、何かを得体の知れないもの感じるのだ。


「マン・ウォッチング。俺が最初に抱いた感想だがね。一見ソイツは、書いた人間が誰かを監視しているように見えるだろ?」


「ああ、それ以外のものには見えないが……」


「普通はな。だが違う、逆なんだよその文章は」


 逆?とはどう言うことなんだと、和泉の言葉に私の思考が刺激される。……人一人を陰で監視、しているにしては詳しすぎる、か?


「そう、逆。監視対象と思われる存在が実はそのレポートの著者自身、なんだ。つまりはな、その日1日、自分が何をし誰と話し何を思ったかを、あたかも自分が監視されているかのように書いた、ただの言葉遊び。ちょっと手の込んだ日記だよ」


「日記、だと言うのか、これが。……確かにそう言われればそう見えなくはない。ストーカーの記述にしては、客観的にすぎる、か」


 私は改めて思考し直してみる。確かにある種の異常者、一人の人間を事細かに追跡、監視しているにしては監視対象に対して、自身の感情を表す文面は、ほとんど無い。

 そう言った心の動き、感情の揺らぎといったものは、あくまでも監視対象が、どう感じていると言った一見、客観視的な文体で書かれているがその実、記述している本人が【そう思っている】、主観であった。


「異常性愛、特にストーキングは対象に対してここまで客観的にはいられない、だろうな。もっとこう、ドロドロとしたとても理性的ではいられない、対象に対する思いや執着、リビドーの発露が文章に表れてもいい、はずだがこれには一切ない」


「なるほどな。まあお前の言うことにも一理あるが、それもまあ主観に過ぎないのが問題ではあるな」


「勿論、ただの俺の主観、だ。だがお前も考えたことはないか?昔、夏休みの宿題で絵日記書けとかってヤツ。まあ絵日記ならまだマシだが、ただの日記を毎日、淡々と書き続けるのはひどくつまらない、何か書いてて楽しいものはないかと、思案したり……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ