第三話。3-9
昔、そう言う仮題をつけて書いていたものだが、書いている途中でつまらなくなり、投げ出したものだった。若気の至り、と言うのか昔の私にはそういう、飽きたら途中で投げ出してしまうと言う、悪癖があったのだ。
「最初読んだ時、笑ったよ。あれ、現代ファンタジーだったよな〜確か」
黒歴史、と言って間違いない。書いた内容は一字一句全て、と言うわけではないが大体のところははっきり思い出せる。知識の不足をオカルト、魔法やら超能力やらで強引に埋めようとしたのだ。それがどうして……
「何で今になって本当のテロ犯罪の行動計画書に化けてしまったのか……」
「うん、それが分からない。見つかった文書の内容こそ、大幅に改変され、かなり具体的な計画書に姿を変えていたからな。最初、すぐには分からなかった。まあその後なんでかお前のことを思い出してな、アイツならやりかねないと……」
「……そんなに私はテロリストに思えるくらい、変な奴だったのか?お前から見て」
私は少し本気で不快感を覚え、和泉を睨んだ。口元には自重気味な笑みを浮かべて。
「冗談だ、と今なら言えるがな。昔のお前のままだったら……ヤバかったかもな実際」
私の視線を軽く流しながらそう言い放ち、特に見るべきものもなかったのか、手に持っていたコピー用紙の束を私に差し出す。
「もう読んだのか?和泉」
私は受け取りながら、目を通したページ分だけを和泉に返した。
「岩永さんって、そんなにヤバい人だったんですか? 昔……」
薬師寺がそう声を掛けてきた。彼女の運転速度が少し上がっている気がする。和泉とのやり取りしている間に、どうやら高速に乗ったらしい。
「こいつが勝手に言ってるだけだ。私は至って普通、真面目な学生だったよ」
「ですよねえ〜和泉警視にヤバいって言わせる何て、一体どんな学生時代をおくっていたのかと……想像するだけでもう怖いって言うか、ヤバいって言うか……」
「知らぬは本人ばかりってね。中々に自分を客観視できる資質っていうのは、得難いものだよ、諸君」
それこそ、お前がいうな、お前がと。私は口に出しかけたが、
「そうだな。鏡に映る自分というのは反転するものだからな。他人は自分の鏡、だよ」




