第三話。3-8
【とある美術教師の回想】
そうタイトルづけられた小説、なのか手記なのかよく分からないごく短い文章がそこにあった。
「つまらない。内容云々の前に多分未完で書くのをやめているな。事件性は無さそうだが……」
「ああ、適当にコピーしたからな、中にはそういうのも混ざっているだろう。適当に読み飛ばしてくれていい」
恐らくは、ネット小説の投稿サイトに偽装しているんだろう。実際の事件や犯罪計画をこう言う手記や小説形式に偽装してと、和泉は言う。
「サイト、と言うよりはもっと簡略的、昔のパソコン通信に似たネット掲示板みたいだな。ページを見る限りにおいては」
本格的な小説投稿サイトではなく、ほとんどテキストのみで構成されている。広告バナーや他ページのリンクもほとんど無い、書き込みの羅列。
「読み手の使い心地の良さなど、まるで考えていないな。まあPCで一々ページ飛ぶ必要ないだけマシだな」
和泉は適当にペラペラと飛ばし読みしている。本当に読めているかどうか、怪しいものだが……
「……事件に関わりるものは除いたと言ったな?」
データの中にあったのか、そう和泉に聞くと、
「ああ、あったよ。取り敢えずはAの犯罪行為に関するものは全て、な。反吐が出るような内容だったよ」
文章データ、だけではない。恐らくは別の犯罪者が撮影したであろう、画像もあったと言う。画質から快楽殺人者の手によるスナッフムービーを再生中、デジカメで撮影したのだろうと。
「つまり、Aはサイトの内容を模倣した?と言う事か?」
「それは正直言って分からない。そういう映像的なものは、フェイクが数多く出回っているしな。Aの犯行とサイトの内容とは、類似点はあっても必ずしも動機と一致している、とは考えていない」
そもそもとして、Aの犯行と【草薙啓一】の事件との関連性が見えない。何故、【彼】が一部の犯罪者達の間で神聖視されているのか。そこが謎だった。
「草薙啓一が計画し、深く関わったとされる事件で、最も大規模かつ凶悪な事件とされているのは、お前も知っての通りだと思うが……」
「通称、七人のテロリスト事件、か。俺が学生時代書いた小説の内容を取り込み、発展させた奴だったな、確か」




