第三話。3-6
それに対してダークウェブは、検索エンジンで見つけることができないだけでなく、閲覧も一般的なWebブラウザーでは不可能であり、専用ツールを必要とするWebサイトである。
「ネットの海は広大で、よく言われるディープウェブ、ダークウェブなんかの話しは氷山の一角だ」
氷山は、海上に姿を現している部分はただの表層、全体の一割程度に過ぎず、その大部分は海上からは見えない海中にある。ネットも数としてはディープウェブやさらに危険度の高いダークウェブのほうが圧倒的に多いのだと。
「ICPOではその手の案件にも、よく関わっていたしな。それに闇サイト、と呼ばれるものの歴史は意外に古いんだ。それこそ、インターネット、ハイパーテキストが登場する以前から、そう言った【秘密性】の高いコミュニティなぞ、挙げればキリがないほどにな」
それが為される方法論として、アナログかデジタルかと言う程度の、ツールの違いでしかないと。
「……なるほどな。みんな知ってる秘密結社、か」
そんな彼の言葉に私は一言、ごく単純な言葉しか出てこなかった。
「今、ネット犯罪専門の部署に調べさせている。何か分かれば連絡してくるだろう」
「そうか。まあ正直言って、ダークだのディープだのの話しはよく分からん。その写真に写っていたページの内容って言うのは、いったい何だったんだ?」
これは質問ではなく、確認だった。Aの行動原理、衝動の源になったものが何であるかと考えた場合、それは容易に想像がつくであろう。
「うん、あたりだったな。そこには例の文章のほか、未発見のものもいくつかあったよ。おい、薬師寺」
「……今、運転中なんですけど。少しお待ちを」
そう言いながら車を走らせ、5分ほど進んだところの信号で停車し、信号待ちしている間に薬師寺が前を向いたまま、座席越しに大判の茶封筒取り出し和泉に渡す。
「取り敢えず、何枚か適当にプリントアウトした物だ。気になるところはないか、目を通してくれ」
「……いいのか?一応、証拠物件なんだろ?部外者に見せて」
「はっ、そんなの今更だろ?充分、お前も関係者……いや、もっとタチが悪いな。重要参考人、ってとこだな」




