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第三話。3-4

「いや、そう言うんじゃないがね。俺がクビになるなり、どっか海外にでもまた飛ばされるんなら、アイツは小躍りしながら元の刑事課へ戻るだろうさ」


 そんな会話をしているうちに、道の向こうから車のヘッドライトがこちらを照らし出した。文学的表現力に乏しい私としては、黒塗りのベンツ、としか形容し難いそれが、我々の前に停車する。


「な?いかにもつまらん、ふっつう〜のベンツ、だろ?俺の趣味じゃない」


 ご丁寧に防弾だそうだ。そう言う言葉はさり気無く、さっさと後部座席に乗り込んでいく和泉。危うく聞き逃すところだったが、


「お前防弾って、ひょっとしてジュリエッタとか言う奴より高いんじゃないか?」


「エッタちゃん、な。知らんよこの車の値段なんか。ちょっと試しに仕入れてみたが、なんかオーナーが気に入ったらしくてな。売り物にしない代わりに宣伝がわりの代車にしてんだと」


 勿論、信頼できるお得意さんだけらしいがね。などと喋りつつ、運転席側の後部座席にどっかり座り込み、足を組んだ。


「うん、初めて後部座席に乗るが、なかなかゆったりしてていいなこれ。車は趣味じゃないが運転手付きならまあ、買ってもいいかもしれん。なあ、岩永」


 そう言いながら私の方を向いた。


「……好きにしてくれ。ああ、運転する気、ないからな?」


 私も彼の隣に座り、その居心地の良さを堪能しながら、彼の専属運転手と言う、わりと好条件であろう再就職先を拒絶した。


「薬師寺は……」


「絶対に、嫌です」


 和泉が全て話し終える前に彼女は言い捨てた。運転手とは名ばかりに、一体何をさせられるか分かったもんじゃないと。二人の関係性及び、彼の為人を知らないものが聞けば、何と言うだろうか……多少興味がある、とは口にしなかった。


「それで、Aの実家からは何が出てきたんだ?」


 ……これが今日の【会合】の本当の目的である。取調室とは異なる、ほぼ密室状態での情報交換。私が捜査協力するにあたっての絶対条件でもあった。が、今回は少々イレギュラーではある。さて、流れで彼女の同席を認めてしまったのだが……今後どうするか。

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