表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/111

第三話。3-2

「おい、あんたらシンジの知り合いか?」


 ほぼ、たこ焼きに掛かりきりで、我々からは後ろ姿しか見えていなかった大将が、不意に声をかけてきた。

 ……シンジ、それはAの実名である。

 大将は、我々からの確認を待たず、調理場の棚から発泡スチロール製の容器を二つ取り出して、慣れた手つきで焼きそばと、たこ焼きを盛り始めた。


「おい、親父。シンジ君の知り合いって、アンタらひょっとして……」


 その言葉を聞いた和泉が、3代目に険しい視線を向けた。自分達が警察関係の人間であると気がついたのだろう、3代目の言葉を制する様に、和泉は軽く首を左右に振る。

 店内、座敷席にいた団体客は既に退店していたが、カウンター席には数名の客がいた。その客らは特に気づいた様子はなく、食事と談笑を続けていた。


「はいよ、持ってきな。あいつ、元気にやってるかい?」


 大将が私に声を掛けてきた。焼きそばとたこ焼きの入ったビニール袋を差し出しながら、


「ここ何年も顔出しちゃいねえが、たまにはうちに食いに来いって、伝えてくれるかい?」


  大将はもちろん知っているのだろう。シンジこと殺人鬼Aがここに直接訪れることはもう無いことを。当然、知り合いであろう3代目も。それを知らないものが聞けばただの世間話風に聞こえる様、そう言っているのだと。


「ああ、伝えておきます。お代は……」


「いらねぇよ、そんなの。シンジにつけとく、いつもの事さ。時々アンタらみたいな知り合いを寄越すのがなあ」


 結構、溜まってるんだがな、ツケ。そう言いながら、大将は厨房の奥へと消えていった。


「あっ!ちょっともう少しお話を……」


 そう声を上げたのは薬師寺だった。


「おい、会計終わったんだろ?いくぞ。ごちそうさん」


「ああ、そうだな。ありがとう、また来るよ3代目」


 私はそう和泉と3代目に声をかけて、彼に押される様に店を出されている薬師寺達の後を追う。後ろからありがとうございました〜と言う3代目の声を聞きながら、私は店を後にした。


「……店に入る前に言ったはずだよな、薬師寺。ここでは仕事関係の話しは基本なしで、って」


 酒が入っているせいか、和泉はやや低くドスの効いた小声を薬師寺の耳元で囁いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ