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幕間のニ B-8

これからの二週間、私の行動方針は決した。


『沈黙は美徳なり』


 あの新米が今後、何を見つけてこようが、私は一切関わらない。

 一応、社会人として大人として、挨拶くらいはしてやるが、事件に関わることは愚か、何気無い世間話すら、あいつとはしないと。

 ヤバい事に足突っ込んだ。私の『人としての』勘がそう、警報を鳴らしている。

 新米がテキトーな思い込みで飛び出してすぐ、半ば開きっぱなしのドアが再び開いた。


「お、やっぱりここでしたか。ご無沙汰してます、草薙さん」


 見覚えあるひとりの男が私に声をかける。……次の【部署】の、上司になる男でかつて、新人時代に指導したこともあるキャリア。現在の階級は警視である。


「これはこれは、和泉警視。お久しぶりです」


 私は立ち上がり、敬礼をする。確かまだフランスにいるとばかり……


「何か御用ですか?ご覧の通り、皆出払っておりますが……」


「ああ、今日午前の便で帰国したばかりでね。その足で一応、上の連中にご挨拶を。あと、仏のナギさんの懐かしい顔を拝みに……」


「ははぁ、さようですか……」


 我ながら、なかなかに無礼な物言いであろう。これでは新米にあれこれ言えた義理ではないな。

 この男の噂はよく聞いていた。国際刑事警察機構、インターポールに出向中の様々なやらかし、武勇伝の数々を。

 正直、真剣に早期退職を考える時期に来ているのかもしれない。体力的にも、精神的にも。


「ん〜ひょっとして暇してますか、草薙さんも。俺も正式に着任するまではまあ、暇でね」


「いえ、暇というほどでは。異動に関係して引き継ぎなど色々ありましたし。それもまあ、ひと段落したので……」


「で、ちょっと気になってた案件をほじくり返してるわけですか。そう言うとこ、ありますよね、草薙さん。退職後に出版予定の手記用に、いいネタでもありましたか?」


 和泉警視が机に置きっぱなしのファイルを指差した。見ても構わないか?と言うことだろうか。


「手記を書く予定なんぞ、ないんですがね。新人の仕事ぶりをチェックしただけですよ」


 私はファイルを手に取り、警視に手渡した。


「……新人と言うと、さっき俺に挨拶もなく飛び出して行ったヤツかな?まあ元気があっていいけどね、若いっていいね、フットワーク軽くて」

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