表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/111

幕間のニ B-4

 私の蘇ってきた印象はここまで。顔の造形、表情は妙にモヤがかかった様に思い出すには至らない。

 彼氏の家での騒ぎで、気が動転していたであろうことまでは、思い出した。そう、あれはまるで日本人形のような、没個性的な造形美、黒髪だけが浮いて見える……


「……って、警部。ちゃんと聞いてます?」


 ……新米の言葉で、ハッと我に帰る。


「ああ、すまん。ちょっと考え事をしてしまった」


「もう、ちゃんと聞いててくださいよ~」


 と、不満の声を上げながらも、事件について熱心に語る新米の表情、声は妙に高揚しているように思えた。

 ……そう言えば、初めてこいつに全面的に任せた案件だったか。それが実質、 新米にとっては『初仕事』になったわけだ。

 確かに、彼女が前のめり気味に熱心な語り口になるのは無理もない。誰しも、1番最初というのは緊張し、至らぬことも多いが、結果として強く心に残ろうというものだ。

 私にしても、そういう経験を通じて今の仕事、生活を手に入れたのだから。


「で、関係者のなかで確かなアリバイもなく、死の前日最後に会ったのがその彼女で、彼女が言うには、ガイシャが自殺なんてするはずがない、と……」


「……まあ、彼女に限らず、身内やなにも知らない関係者なら、そう主張したいところだろうな」


 私は、ファイルをペラペラめくりながら、ごく無難な一般論を呟いた。


「まあ、そうなんですけどね。でも彼女、事件直後は熱心に訴えに来てたじゃないですか。電話もしょっちゅうでしたし……」


「……そうだっけか?」


「全部、私が対応したんですからっ!」


 私の興味なさげな態度が気に入らなかったのか、新米の声が荒くなる。


「本当に、怖いくらいでしたよ、あの子の熱心さは……夜中にも関わらす、仕事用のケータイに電話かけてきて、捜査の状況聴きたがったんですから」


「で、たまらず夜は携帯電話の電源切るようになったと」


 まあ、当然そうなるわな。仕事用とはいえ不用意に、気が動転した関係者に番号を明かすなんて、バカのすることだ。

 時々、納税者の皆様の、ごくごく一部の方は『公僕』が、同じ人間なんだと言うことを、お忘れになっていらっしゃるようで。


「そうなんですよ! よくおわかりですねえ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ