第二話。2-8
「岩永、メニュー貸してくれ」
少し、口の中に焼きそばが残っている状態で和泉が手を伸ばしてきた。私ははいよ、とばかりにメニューを和泉に渡しながら、
「薬師寺さんも、遠慮なく注文してくださいね。どうせコイツの奢りだから」
「……おい、いつ今日は奢りだなんて言った?」
メニューに視線を向けながら、和泉が私に言い返す。
「奢りと言うなら、ここを指定したのは岩永の方だから、今日の払いはお前持ちだろう」
「……まあ普段は到底、安い原稿料でこき使われてるフリーランスがいけるような場所じゃ無いからな、お前の行きつけは」
たまには奢ってやらんこともないぞ、と。メニューにざっと身を通した限り、私にもここの飲食代、三人分程度はまあどうとでもなるだろう。予定外の女性の同伴があったが、それが男であっても私が払うことに不満はない。
それくらいは【高い店】で、私は彼に奢ってはもらっているのだ。ここ最近、【捜査協力】の名目で。
「ああ、そんな。私の分は出しますよ、初対面の岩永さんに支払ってもらうわけには……」
「ああ、本当に遠慮しないでください。色々期待してたんでしょ?こいつがどんなとこで飯食ってるか」
「あっ!わかります?部長がこれから鉄板焼きの店行くとか言ったら、そりゃ興味出るでしょ。直属の部下としては」
薬師寺が食い気味に話す。大体は想像通りだった。近年、鉄板焼きは創作和食だの、おしゃれなダイナーで小粋なコース料理で、お一人様ウン万円等々と言う庶民感覚からかけ離れた、ワイドショーの意識他界系ネタも大概にせいと、思わないでもない。
「それは残念でしたね。こいつの行きつけは大体、ワイドショーネタでよく取り上げられるやつですよ」
まあ、そう言うところを選んでいる、理由はある。
「……おっここ、焼き飯あるじゃないか。頼もう」
あとビールも、と和泉自身は私たちの会話を聞いてか聞かずか、マイペースを崩さない。
「焼き飯は〜こちらで焼かれますか?」
「ああ、自分でやりますんで、取り敢えず二人前で」
店員と話しを進める和泉。二人前?まあいいか。鉄板で焼き飯とは、どう言う事だ?と私が問う。
「ああ、そっか〜なるほど。お前知らんのだな、焼き飯と炒飯の違いを」
ま、ここは俺に任せろ、と何やら自身ありげに言う和泉。
「じゃあ私はもんじゃ焼きを。それと烏龍茶をお願いします。




