第二話。2-7
随分と無情な物言いである。どう言う経緯で和泉が彼女と連れ立ってここまで来たのかは定かではないが、店内にまで一緒に入っておいて、流石に帰れはないだろう。
「えっ!それはないでしょ?鉄板焼きの店に行くって言うからってついてきたのに、 私、運転もしましたよね?本社から営業先経由で」
営業先……隠語かな?と言うことは……
「ああ、うんわかったわかった。取り敢えず座ろうか。奥の座敷が空いてるようだし……」
と、部下の話しを聞いているのか聞いてないのか、テキトな受け答えをしながらズカズカと奥へと進んでいく。
「いらっしゃい、どうぞこちらへ〜」
女性店員が和泉と言う薬師寺を案内する。私も後に続くため、手に自分のコップと飲みかけの瓶ビールを取り、移動する。残りの注文した料理は店員が運んでくれた。
和泉はマイペースで壁側の奥の隅に陣取り、その後に薬師寺が続く。私は隣の団体客を背にする形で、鉄板を前にして中央部に座る。
……一瞬、女性は奥座席に座らせるものではないのかな?と、中途半端にレディファースト気取りなことを思ったが、当人達はさほど気にしてないようなので、口にするのはやめた。
「取り敢えず、先に注文してたやつだが……」
と言って、移動した座席に運んでもらった焼きそばとたこ焼きを彼らの目の前に差し出す。
「おっ悪いな。結構腹減ってたんだよ。電話で言ってたやつだな。確か」
和泉は割り箸を手に取り、直に焼きそばを掴んで一口。その状況を見ていたのか、店員が小皿を3枚ほど持ってきてくれた。
……うん、普通シェアするものに直箸はないよな。ましてや私と二人でのいつもの会食ではなく、女性もいると言うのに。私は割り箸と爪楊枝を一式、手にとって彼女に手渡した。
「おや?岩永。いつになく気が効くじゃないか?」
女に対しては気が効くってわけじゃないよな、お前が。などと余計なことを言いつつ小皿を一枚、自分の手に取り焼きそばをそれに盛り始めた。
「あっすいません、ありがとうございます。……じゃあ私も、頂かせてもらいます」
「どうぞ、ご遠慮なく」
私はそう言うと、改めて備え付けのメニューを手にとった。
うん、時に気を衒ったメニューではない。定番のお好み焼き、もんじゃの各種。唐揚げ・餃子その他、居酒屋メニューに加え丼もの。あと麺料理にうどん、蕎麦がある程度。意外に思ったのは焼き鳥が無い代わりに、鉄板で焼く鶏肉のソテー、とり天があることか。




