第二話。2-5
タレを全体に絡ませ、さっとお皿に盛り付ける。……鉄板上のそれ全部で一人前、じゃ無かったことに残念なような、安堵するような気分であったが、まあ居酒屋料理よなと。
「へい、にいさん、お待ち」
私の前に突き出されるホルモン焼きの皿を手に取る。手元に来ることでより一層、味噌ダレの香味を感じる。先程出されていた塩ダレはは特に感じなかったが、色々と調合には工夫がありそうだ。
目の前の箸を手に取る、割り箸ではない塗り箸。若干取りにくそうだなとは思ったがまあ文句は言うまい。
「幅広のホルモンにもやしを巻いてどうぞ、キャベツに巻くのもいいですよ〜」
先ずは三代目のお薦め通りにしてみる。
「……ふむ。いけるね」
ニンニクと唐辛子だろうか、辛味のある味噌ダレ、もやしのシャキシャキ感とモツの脂身の甘さが程よく混ざっている。最初のモツを飲み込み、ビールを少し口にする。
口内を全て洗い流すのでは無く、舌を整えるようにしてビールを飲み込み、二口めの準備に広めのキャベツを箸で選び、モツともやしをチョイスしてた時、スラックスのズボンに入れていたスマホがブルブル震えだす。
タイミングとしては絶妙よな。口に物が入ってないのは良いが、中断させられる事に不快感を覚えた。電話の相手は見るまでもない。
「もしもし?着いたか?」
単刀直入である。車で来ているはずだから、近くの駐車場からくるにしてもまあ、あと5分後と言ったところか。そう言うと……
「んん?お前、道迷ったか?駅からルート外れてるじゃないか」
「……うるさい、さっさと来い。こっちは始めているぞ」
了解。そう言って通話は切れた。まあ車はいつもの事なので、あいつは今日も飲まんだろうが。私は中断していた作業を開始する。
ホルモンの二口めを口に運ぶ前に、程よく冷えたたこ焼きを二つひょいひょいと平らげる。
「たこ焼き、五つ。あと焼きそばも」
「へい、たこ焼き五つ、焼きそば一丁」
まあ、食べるだろう、あいつも。個人的交友範囲内で、たこ焼きと焼きそばのコンボ、或いは単体で苦手という友人・知人とは、知り合う機会がなかった。
そう言えば、【うちの嫁が晩飯に焼きそばだけ出してきて、大げんかになった】とか言う話しを小耳に挟んだな。




